2009年6月9日3時0分
宗教法人が所有する長野市のホテルに着いた。入り口には「宇宙真理学会」の看板が掲げられていた
宗教法人「宇宙真理学会」が運営する長野市内のラブホテル。入り口で白い観音像が出迎える
「宇宙真理学会」の看板の反対側には「喜捨をお願いします」との表題で、「世界の恵まれない子供たちに」などと寄付を募る文がつづられていた
受付で宿泊代金を払い、部屋に入った。室内でも「喜捨」を募る張り紙と、お金を入れる朱塗りの小皿が置かれていた
学会が運営するホテルの部屋の壁には「喜捨」を募る張り紙があった。記者が「喜捨をしなきゃいけませんか」とフロントに問い合わせてみると、「小銭を、お気持ちがあれば観音様に。ただ、宿泊料の5500円から2千円を喜捨に充てるので大丈夫」と話した
朱塗りの小皿には3円が入っていた。ホテルはかなり古かったが、従業員は気さくで親切だった
学会の「主な事務所」とされる香川県多度津町の10階建てマンションの一室を訪ねると、ドアノブには四国電力からの「電気の契約を廃止」という通知がぶら下がり、インターホンに応答はなかった。隣近所に聞くと、20年ほど前から人の出入りを見たことはないという
長野県など中部地方を中心にラブホテルを経営する宗教法人が関東信越国税局から約14億円の所得隠しを指摘されていたことが分かった。ホテルの休憩料などの収入は本来、課税対象だが、国税局はこの宗教法人が休憩料の一部を非課税のお布施と偽っていたなどと認定した模様だ。
公益法人の一種の宗教法人は実質的な税率が低いため、同法人への追徴税額は重加算税を含めて約3億円。同法人は指摘を不服として異議申し立てをしている。これらのホテルは同県千曲市のキノコ・野菜類加工販売会社の前社長(71)が実質的経営者とみられ、同社の現社長(46)は「実際に国内の恵まれない子にお金を送っている。国税当局とは争う」と話している。
この宗教法人は「宇宙真理学会」。香川県多度津町の10階建てマンションの一室が主な事務所となっているが、朝日新聞が調べたところ、宗教施設は見当たらず、信者などの存在も確認できなかった。ドアノブには四国電力からの「電気の契約を廃止」という通知が下がっていた。近所の人によると、20年ほど前から人の出入りはないという。
同じ系列のホテルは長野をはじめ静岡、岐阜、群馬、新潟の計5県に少なくとも23軒ある。このうち長野市内のホテルには玄関に観音像と「宇宙真理学会」の看板が掲げられ、部屋には「世界の恵まれない子どもたちに喜捨をお願いします」「少しでも多くの幼い命を救うために」などと書かれた張り紙があった。
ホテルは、客から得た休憩料や宿泊料の6割ほどを課税対象の売り上げとして計上し、残りは客からのお布施(喜捨)扱いにしていた模様だ。フロントに問い合わせると、宿泊料の5500円のうち「2千円を喜捨に充てる」と説明した。