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【コラム】キッコーマンと韓国食の世界化(下)

 研究開発にも全力投球した。研究所や米国の販売会社を通じてしょうゆを使ったレシピを開発、これをパンフレットにして料理評論家や、スーパーマーケット、メディアに大量に配った。バーベキューを好む米国人をターゲットに、61年に打ち出した「てりやきソース」はこうした努力の賜物だった。

 キッコーマンの現地化プロジェクトは現在進行形だ。ヨーロッパでは名門料理学校やレストランなどと提携し、現地の人々の口に合う甘めのしょうゆを、アジアではシンガポール国立大学と共同で漢方薬の成分を含んだ「プレミアムしょうゆ」を開発した。「現在世界において40万キロリットルに上るキッコーマン製しょうゆの販売量は、2020年には100万キロリットルに達する」と同社では確信している。

 こうしたキッコーマンの大成功は、日本食の世界化に決定的な役割を果たした。茂木会長は、「欧米では“キッコーマン”なしの刺身やすしは考えられない」と話す。「キッコーマンに代表される日本のしょうゆがあってこそ、本当に高級でおいしい日本食」という「セット化」に成功したことで、すしブームなどの相乗効果を生んでいるのだ。

 では、韓国食はどうだろうか。今月初め、済州島で行われた韓国・東南アジア諸国連合(ASEAN)特別首脳会議で、李明博(イ・ミョンバク)大統領はエプロン姿になり韓国食のPRを行ったほか、官民共同の「韓国食世界化推進団」と「キムチ世界化戦略団」が先月発足するなど、韓国食の世界化に向けた動きは慌ただしい。

 しかし、キムチについてみると、建設費だけで560億ウォン(約44億円)に上る「キムチ研究所」の招致をめぐり、地方自治体同士の競争が過熱化する様相を呈しているだけで、具体的な取り組みは遅々として進んでいない。韓国食の世界化の第一弾として期待された「コチュジャン(唐辛子みそ)の辛さのランク付け」はCJと大象という二大メーカー間の確執で、暗礁に乗り上げる恐れが出てきた。現時点で、単一の食品輸出(現地生産含む)で2億ドル(約200億円)以上を稼ぐ韓国企業はゼロだ。

 52年前に裸一貫同然で進出し、世界市場を制覇したキッコーマンなどの尽力で、日本は日本食の世界化をほぼ達成した。少なくともキッコーマンに劣らぬ闘志と、果敢に挑戦する企業家精神がなければ、遅れてスタートした韓国食の世界化は「空念仏(からねんぶつ)」に終わるのがオチだ。

産業部=宋義達(ソン・ウィダル)次長待遇

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

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