2009年6月8日(月)「しんぶん赤旗」

郵便割引不正事件

癒着のトライアングル

厚労省 国会議員 日本郵便

“福祉食い物”くっきり


 障害者団体向け郵便制度を悪用した「郵便割引不正事件」は、郵便事業会社「日本郵便」の幹部につづいて厚生労働省係長の逮捕にまで発展しました。自称・障害者団体への証明書発行は、「国会議員に頼まれた」との供述も飛び出しました。浮かんできたのは、福祉を食い物にした政財官癒着の構図です。


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(写真)「白山会」の所在地となっている守田容疑者の自宅には、民主党のポスターが…=東京・文京区

 2日の参院厚生労働委員会。日本共産党の小池晃議員は、厚労省の村木厚子雇用均等・児童家庭局長に事件への関与をただしました。

 村木氏は、証明書の発行当時(2004年)、同省障害保健福祉部企画課長。この虚偽の証明書で、「凛(りん)の会」(現・白山会)が障害者団体として郵便割引制度の適用を受けました。同局長は「お答えできません」の一点張りでした。

 しかし、「凛の会」設立者の倉沢邦夫容疑者(73)は、大阪地検特捜部の調べに、「偽の証明書を(同局長から)直接受け取った」などと供述しています。

 同課係長の上村勉容疑者(39)の上司だった障害保健福祉部の元部長(現「福祉医療機構」理事)は、証明書発行について、国会議員から要望を受け、「議員案件」として企画課長らに対応を指示したといいます。

 厚労省ぐるみの様相が浮かび上がります。

国会で質問も

 倉沢容疑者は、民主党の石井一副代表・参院議員の元私設秘書。政治家の関与も明らかになっています。

 民主党の牧義夫衆院議員は、凛の会から名称が変わった「白山会」会長の守田義国容疑者(69)とは20年来のつきあい。07年1月、白山会のDM(ダイレクトメール)の返送先が障害者団体とは関係のない大手家電量販会社「ベスト電器」になっていたため、発送を拒否されました。この際、守田容疑者の陳情を受け、牧議員の秘書が日本郵政公社(当時)の関東支社を訪問、発送できるよう働きかけました。

 08年5月の衆院経済産業委員会で、牧議員は白山会とライバル関係にある団体のDMを掲げ、「社会福祉の名を借りた商売が横行している」などと批判する質問を行いました。

 牧議員が支部長の「民主党愛知県第4区総支部」は07年、08年に、守田容疑者が社長の信用調査会社から各12万円、計24万円の献金を受けています。

 自民党の来代勝彦都議(港区選出)は、05年ごろ、自称・障害者団体「健康フォーラム」代表の菊田利雄容疑者(61)から団体認定で口添えを依頼され、港区の担当者に電話。計36万円を同容疑者からもらっています。

背景にノルマ

 日本郵便の新大阪支店の支店長、新東京支店の総務主任は、制度の適用要件を満たしていないことを承知のうえで大量の違法DMの発送を許可したとして、郵便事業法違反容疑で逮捕されました。

 不正を見逃してきた背景には、郵政民営化で各支店に発送量のノルマが課せられていたことが指摘されています。

 通常なら1通120円が8円で送れるこの制度。大阪の広告会社「新生企業」(現・伸正)が07年までの4年間に不正に免れた額は約130億円にのぼるといわれています。利用した顧客はベスト電器など大企業でした。

 割引分は一般の郵便料金で補てんされているわけで、被害者は、まじめに活動している障害者団体や国民です。事件の徹底的な解明が求められています。

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