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きょうの社説 2009年6月8日
◎ジャズの祭典 「民」の動き活発化は大歓迎
今年9月の5連休中に金沢市中心部で初めて開催される「金沢JAZZ STREET
2009」に向けて、「民」の動きが活発になってきた。大手ビデオレンタル店が北陸3県への発信などで全面的に協力することになり、大手旅行代理店も3大都市圏でこの催しを組み込んだ旅行商品を売り出すことを決めた。市によると、これらはいずれも相手側からの発案という。この種の催しは、「官」がどれだけ旗を振っても「民」がそれに呼応しなければ成功は おぼつかない。ビデオレンタル店も旅行代理店も、地域貢献の視点に加え、自らの利益にもつながると判断したからこそ、協力に踏み切ったのだろうが、催しの盛り上げにつながる「便乗商法」は大いに歓迎である。今後も、こうした動きがさらに広がることを期待したい。 「金沢JAZZ STREET2009」を開催する狙いは、市中心部ににぎわいを創 出し、活性化を図ることだ。北國新聞赤羽(あかばね)ホールや市文化ホールでの「ホールジャズ・ライブ」に加えて、竪町や香林坊、柿木畠、近江町などでも「まちかどジャズ・ライブ」が開かれるのは、そうした目的を実現するためでもある。 その意味では、より積極的に催しに「便乗」してほしいのは、やはり中心商店街であり 、地元企業である。会場周辺を飾ったり、店頭にポスターを掲示したりといった取り組みにとどまらず、たとえば、開催に合わせてセールや特別サービスなどを企画すれば、さらに多くの人出を引き寄せることができるだろう。ほかにもやれることはいろいろあるはずであり、知恵を競ってもらいたい。 「まちかどジャズ・ライブ」では、広場や路上などに加え、尾山神社の境内も会場とな る。市によると、旅行代理店から旅行商品化を打診されたため、「県外からの来場者にも存分に楽しんでもらいたい」ということで、歴史空間を会場として活用する案が出てきたのだそうだ。これも「民」の協力によって生まれた思わぬ成果と言えよう。今後も「官」と「民」が支え合い、刺激し合って、催しの魅力を高めていきたい。
◎防衛省改革 正しい文民統制のために
防衛省の内局中枢に自衛官(制服組)を登用する同省の組織再編案が明らかになった。
防衛政策の立案部門などの幹部は現在、文官の内局官僚(背広組)で占められている。そこに制服組が加わることで、文民統制(シビリアンコントロール)という大原則が危うくなるという批判もあるが、それは短絡的に過ぎるのではなかろうか。正しい文民統制のために、むしろ必要な改革と受け止めたい。文民統制とは、国民の代表である政治家の責任で自衛隊を統制することである。政治が 軍事に優先する統治の原則であるが、一部には、内局官僚による統制を文民統制のようにいう向きもある。政治の優位というより、官僚優位の実態を示しており、文民統制と「文官統制」が混同される状況が長く続く中で、前防衛事務次官の汚職事件が生まれたといえる。 防衛省の官僚優位の背景には、旧日本軍の反省から、制服組に発言権を持たせない方が よいという考え方があるのだろう。しかし、最高責任者の首相や防衛相が、防衛政策の決定や自衛隊の運用で的確な政治判断を下すには、軍事の専門知識を持ち、災害の実情にも通じた制服組の意見をじかに聞くことが必要であり、内局の主要組織を背広組と制服組の混成にするのは当たり前ではないか。 今回の組織再編案では、防衛政策局の機能強化のため、次長を現在の背広組1人だけで なく、外務省出身者と制服組を加えた3人体制にする。北朝鮮の核・ミサイル開発や中国の軍事的な台頭、自衛隊の海外活動の拡大など安全保障環境の変化に備える狙いであり、当を得た対応といえよう。 今国会では、防衛省設置法の改正案が成立し、防衛相の政策決定を補佐するため、事務 次官ら内局幹部に制服組幹部も加わって基本方針を審議する防衛会議を設置することになった。重要なことは、文民統制に誤りがないよう、文官と武官がバランス良く機能する組織にすることであろう。要は政治であり、「内局統制」などと言われることがないよう、あえて指摘しておきたい。
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