きょうのコラム「時鐘」 2009年6月8日

 ハモが入った、と店の主人に声を掛けられた。「奥能登から」と聞いて驚いた。ハモは代表的な京料理の1つ、と雑誌に紹介されている

昔は、捕れても畑の肥やしにしたそうである。やたら骨の多いハモは、料理人が「骨切り」という熟練の包丁の腕を競う。そんな手間暇を掛けてハモを食べるより、「ここらにはうまいものがいくらもある」。そう言われて、今度は納得した

ハモもアナゴも高級マグロも捕れる地元で、ブランド化をうたう「能登丼」が3年目に入った。夏秋メニューの提供が来月、始まる。アワビ、岩ガキ、能登牛のステーキなど多彩なメニューとある

メニューの「など」も知りたくて、昨年食べ歩いた人に聞いてみた。新鮮な海の幸はそろい踏み、ユニークなハタハタ丼や山鳥、豊富な山菜など、掛け値なしの「食の宝庫」である。が、能登丼を楽しむのは、遠来の観光客が圧倒的だそうである

いつでも行ける、と思うと、かえって足は遠のく。出無精を決め込んで、「京都人の京知らず」のようになるのは、悔しい。うれしいことに、ことしから格安のコンパクトな丼も登場する。