BC兵器とエイズなどに関する50年史




遺伝子工学・生体実験
BC兵器とエイズなどに関する50年史


この年表は、『DAYS JAPAN』(講談社、1988年6月発行)の記事、ビジュアル・ノンフィクション「エイズ・生物兵器説を追う」から採録した、「新聞等の刊行物資料をもとに作成」(同記事の注釈)されたものである。


1931-1941
 石井731部隊が中国人、朝鮮人、ロシア人、イギリス人、オーストラリア人、アメリカ人へ、ペスト菌等の人体実験。

1934-1944
 ナチス・ヒトラーは約2000種の有機化合物を合成、人体実験を実施。

1941
 米陸軍の、化学戦部隊の中で生物戦の研究開始。
 英国がスコットランドのグラナルド島でドイツ攻撃のため炭疽病の細菌爆弾を作る実験。

1942
 2月 全米科学アカデミー特別委員会が生物戦プロジェクトの推進を勧告。
 夏 戦争研究機関(WRS)が全米28の大学で、化学戦部隊の生物戦秘密研究スタート。指導者の1人、コロンビア大学の微生物学者ローズバリー。
 8月 生物兵器研究のためのマーク委員会発足。(委員長はジョージ・マーク)

1943
 1月 WRSがボツリヌス菌使用法のため、コーネル大ハーガン、炭疽菌の使用研究をハーバード医学校のミューラーと契約。
 ユタ州ダグウェイ実験場近くに生物戦の爆弾実験用に約660Iの施設が作られる。
 ミシシッピ州ホーン島に、化学戦部隊が生物戦用爆弾の野外実験施設建設。
 メリーランド州フレデリックにキャンプ・デトリック(のちのフォート・デトリック)創設。
 インディアナ州テレ・ホートに生物戦用爆弾の生産工場。

1944
 アメリカで炭疽病の生産施設の建設許可。
 11月3日より6カ月間に、日本がアメリカ本土爆撃のため飛ばした風船爆弾3000個のうち135個をオレゴン州など4州で発見。

1945-1947
 テネシー州オークリッジの病院、ニューヨーク州のスローン・ケッタリングメモリアル病院、シカゴ大学病院で子供を含む180人にプルトニウム溶液を注射。人体実験。

1950
 アメリカ海軍がサンフランシスコ一帯でバクテリア撤布実験。肺炎のような症状発生。
 2月 元731部隊員の協力で、埼玉県北葛飾郡川辺村に河辺村試験動物飼育組合結成。

1951
 アメリカ軍が病原菌を空中撤布する実験を48回実施。

1952
 1月〜2月 アメリカ軍機が朝鮮半島と中国の各地で、大量の細菌と害虫を撤布。

1952-1953
 アメリカがメリーランドなど5つの州で、亜鉛カドミウム剤の撤布実験。呼吸困難続出。

1953
 徳島大医学部精神神経教室で精神病院の患者に有毒物質を注射。人体実験。

1953-1955
 新潟県の青山信愛会経営、新潟精神病院が精神病者149人にリケッチアを皮下注射し、人体実験。(つつが虫病研究に米軍406部隊が資金提供)

1955
 CIAがアメリカ陸軍CBWセンターから入手したバクテリアを使い、フロリダのタンパ港湾地区で生物戦の実験。百日咳のような病気で12人死亡。

1956
 キャンプ・デトリックが正式にフォート・デトリックと命名される。
 アメリカの製薬会社が、プエルトリコ人とハイチ人の婦人対象にピルの生体実験。
 2月 中国が解放軍総部に防化学兵司令部設立。

1956-1958
 アメリカ陸軍が、フロリダ州とジョージア州の黒人貧困層の居住区に黄熱病の蚊を空中撤布。黄熱病の死者発生。

1958
 アメリカのインディアナ州ニューポートに神経ガス製造工場建設。
 春 ソ連のウラル地方で核爆発。住民数万人被曝。

1960
 1960年代アメリカ陸軍が、ハワイのオアフ島、ハワイ島などで生物戦の戸外模擬実験。

1962
 アメリカ空軍がベトナムで化学薬品撤布。

1963
 9月1日 横浜港内で作業中の清掃船の乗組員が米軍基地から流出した塩素ガスで中毒症状。

1964
 8月 相模原市宮下地区で、米陸軍相模原給廠から塩素ガス流出。農作物に被害。
 11月2日 サイゴンの仏教徒デモで南ベトナム軍が催涙ガス(CS、CN)使用。

1965
 3月3日〜5日 解放戦線に対して南ベトナム軍が毒ガス使用。
 6月28日 青森県三沢の米軍射爆場で爆発事故。刺激臭発生。豚や鶏が死亡。農作物と住民に被害。

1965-1968
 アメリカのダウ・ケミカル社がフィラデルフィア州立刑務所の囚人70人を対象にダイオキシンの人体実験。

1966
 6月7日〜10日 アメリカ陸軍特殊作戦部隊がニューヨーク市の地下鉄に細菌撤布。

1967
 3月 アメリカ軍が南ベトナムにダイオキシン撤布。
 6月〜8月 陸上自衛隊が隊員に赤痢予防の薬物(ミドリ十字社製)投与。後日、食中毒発生。

1968
 沖縄の米第2兵站部隊、知花弾薬貯蔵庫、毒ガス防護服の修理工場、化学兵器貯蔵庫、訓練施設でウサギが異常死。
 3月 アメリカのユタ州トゥエラ陸軍弾薬庫で神経ガスの野外実験、ヒツジ数千頭死亡。米軍座間基地でも多数のヒツジ飼育。
 7月12日 山口県岩国米軍基地沖合の姫小島砲弾爆破場で、化学兵器の破壊処分と思われる白い煙発生。市民の目やノドに刺激症状。
 7月22日 沖縄の那覇市、開南小学校児童が海岸で水泳中、集団皮膚炎症事件。米軍の毒ガス兵器の疑い。

1969
 CIAがワシントンの食品薬品局のビル水道に化学物質を投入。毒物実験。
 7月7日 米軍沖縄基地で毒ガス漏れ。24人が入院、極秘隔離。

1971
 CIAがASF(アフリカ豚熱)作戦をキューバで展開。沖縄基地に貯蔵していたマスタード、GBガス、VXガス等の毒ガス兵器をジョンストン島に輸送。

1972
 アメリカが南ベトナムから、ダイオキシンをジョンストン島に輸送。

1974
 アメリカのミズーリ州タイムズビーチでベロナ農薬工場のダイオキシン廃棄物を道路舗装に使用。(1982年12月判明、住民移転)

1976
 アメリカのユタ州ダグウェイ基地陸軍CBWセンター近くの泉で50頭の馬が変死。

1978
 南米ガイアナのジャングルで914人の集団自殺(人民寺院事件)。CIAと陸軍による生体実験の疑い。

1979
 アメリカでエイズ抗体陽性者第1号発見。(1981年発表)
 4月 ソ連スベルドロフスク生物化学兵器生産工場で炭疽病施設の爆発事故。炭疽病流行約1000人死亡。

1980
 エイズウイルスの抗体陽性者が日本に初めて出現と発表。
 8月 米カリフォルニア州立大サンディエゴ校で、遺伝子組み換え実験中に猛毒人工ウイルス誕生。同校実験室の冷蔵庫から狂犬病のウイルス盗難。脅迫電話。

1980-1981
 キューバで豚に原因不明の流行病。タバコの青カビ病、砂糖きびのサビ病、デング熱など発生。101人の子供と57人の成人が死亡。

1981
 イギリス軍、核兵器事故訓練で放射性物質撤布。
 5月 慶応大学医学部で組み換えDNA実験安全管理規定が問題になる。
 9月 アメリカのメリーランド州フォート・デトリックにある米陸軍研究所から実験ウイルス紛失。(黄熱病や炭疽病の病原菌)
 9月22日 ソ連国内の生物化学兵器生産工場8施設の存在を米国偵察衛星が探知。
 10月 イギリスのポートンダウンの国防省化学研究所等に炭疽熱汚染地グラナルド島の土が撤布される。

1981-1983
 米ジョージア州とメリーランド州の一帯で、狂犬病ウイルスに感染したアライグマが大量発生。

1982
 2月8日 レーガン米大統領が化学兵器の生産再開を発表。
 9月 米国立防疫センターが後天性免疫不全症候群をエイズと命名。
 春 アメリカのギャロ博士、医学誌「ランセット」誌上でエイズの「アフリカ・ハイチ起源説」を発表。

1983
 アメリカのフレデリック研究施設がNCIのギャロ博士のエイズ研究班に参加。
 イギリスの薬品会社がイラン・イラク両国に化学兵器の神経ガスとマスタードガスの原料を大量輸出。
 1月 フランスのパルツール研究所モンタニエ博士がエイズウイルス発見。(LAVと命名)
 8月 アメリカのNIH動物資源計画部長ウィリアム・ゲイがタイワンザルとアカゲザルにエイズ類似症ありと発表。S-AIDSと命名。
 10月26日 米国立アレルギー感染症研究所のフォークス博士がエイズの原因としてカビ説を発表。
 11月8日 米上院本会議が神経ガス兵器生産を審議。ブッシュ議長の決定票で可決。
 11月20日 ソ連のパスツール記念研究所の依頼により人工衛星サリュートで流行性感冒の撲滅薬を製造。
 12月10日 アメリカ国防総省の生物兵器の専門家、デオキシリボ核酸組み換えを利用した細菌やワクチンの研究が発覚。
 12月 フランス・パスツール研究所がエイズウイルス検出法をアメリカ特許局に申請。

1984
 3月11日 イラクがアカシャットに秘密化学工場を建設。神経ガスを製造していたことが発覚。バグダッドの南サマクなど計3工場が1978年から操業開始。
 5月〜6月 米モンタナ州立大学の植物病理学者ゲーリー・ストローベル博士が遺伝子組み換えでつくった細菌を野原に撤布。数週間後、サウスダコタ、ネブラスカ、カリフォルニア各州でも実施。
 8月19日 南アのトランスバール州ルイストリチャード付近の有色人種だけを殺す兵器を作る実験所で黒人、混血、アジア人の政治犯を生体実験。南ア空軍司令部付属医学研究所に米国防総省とイスラエル政府が協力。
 8月21日 太平洋ジョンストン島の米陸軍化学兵器貯蔵所で化学兵器を放置し、嵐のため米軍避難。
 8月23日 ソ連がキューバに生物化学兵器(細菌兵器T2)を備蓄していることが発覚。
 12月3日 インド・ボパールにある米ユニオン・カーバイド社の工場で致死性のガス大量漏出事故。

1985
 1月10日 スウェーデン首都ストックホルム付近のカールスコガ火薬工場から有毒ガス流出。(ノーベルケミ工場)
 2月19日 カンボジア駐留ベトナム軍がアンピルからタイ領サンローチャンガン村北部に毒ガス・ロケット弾を発射。
 3月 イラン・イラク戦争でイラクが化学兵器使用。アメリカは4億ドルの予算でジョンストン島化学兵器処理システム建設を開始。
 3月22日 日本初のエイズ患者を認定。
 5月 アメリカでエイズ患者1万人を超す。
 6月14日 インドネシアのジャワ州郊外モンローゼ・ペスチンド・インドネシアの梱包工場でDDT漏出。16人死亡。
 6月19日 アメリカ下院が化学兵器の製造を承認。
 7月1日 厚生省は加熱血液製剤の製造輸入を承認。財団法人・化学及血清療法研究所、ミドリ十字が製造。ヘキスト・ジャパン、カッタージャパン、トラベノールが西ドイツやアメリカから輸入。
 8月11日 米ウェストバージニア州インスティテュート市のユニオン・カーバイド化学工場で有毒ガス漏れ事故。住民129人が中毒。
 8月30日 インド・ボンペイ郊外の化学工場で塩素ガス漏れ事故。1人死亡。149人中毒。
 9月19日 アメリカのイーライ・リリー社とジェネンテック社の共同開発による遺伝子新薬が承認され、塩野義製薬が同社と提携。
 9月29日 エイズ予防の検査セットをダイナポット社が日本で輸入申請する。
 10月1日 NCIの満屋裕明博士らがエイズ新薬を開発。発売はB・ウエルカム社。
 10月1日 イスラエル・ワイツマン研究所のトライニン教授、エイズの治療薬を開発と発表。
 10月 パリ・ラネック病院でエイズ特効薬のため患者1名が死亡。
 10月30日 ハーバード大のノーマン・レトビン博士、NCIのA・フォーシ博士らがフランスのエイズ特効薬を批判。
 エイズ治療をめぐり、アメリカとフランスが対立。(パリ・ラネック病院のJ・アンドルー博士、NCIのA・フォーシ博士、カリフォルニア大サンフランシスコ校のP・ホルバーデイン博士とフランスのパスツール研究所が対立)
 12月4日 インド・ニューデリー西郊のシリラム食品肥料工場のタンクから酸性ガス漏れ発生。
 12月5日 アメリカ政府が403種類の有毒物質の生産、販売、使用に警告。
 12月13日 フランス・パスツール研究所がアメリカ連邦裁判所にNIHを相手取り、「米側がエイズウイルスの特許を取り、ウイルス感染の検査法を開発した製薬会社から売り上げの一部を徴収しているのは違法だ」と提訴。
 12月20日 ノボ薬品がヒト・インシュリンを親会社ノボ・インダストリー社(デンマーク)から輸入販売。(国内初)
 12月20日 成人T細胞白血病(ATL)の診断薬製造が承認される。開発はエーザイと富士レピオ。

1986
 1月20日 エイズ検査試薬(ダイナボット社)の輸入を承認。
 1月28日 空中爆発したチェレンジャーから散乱した緑色の破片に正体不明の有毒物質含有。
 2月13日 アメリカのエイズ治療薬アジドナミジン(AZT)を日本が輸入。
 東京、大阪の日赤で献血者のエイズチェックを開始。
 3月 B型肝炎バイオワクチンの開発競争を製薬7社が展開。アメリカのメルク社、日本のミドリ十字が臨床実験。武田薬品工業が続く。
 4月2日 アメリカの大手保険会社が足並そろえエイズ検査。
 5月1日 京都にパスツール研究所発足。(岸田綱太郎理事長)同研究所は世界各地18カ所にある。
 6月16日 フランス・パスツール研究所でバイオ研究者に連続癌死事件発生。
 7月2日 スイスに近いフランス・リヨン郊外のフランス電力会社の変電所火災でダイオキシンガス発生。数千人が避難。
 9月19日 カリニ肺炎の早期発見診断法を広島大医学部の辻守康教授(寄生虫学)のグループが開発したと発表。
 9月23日 福島医大の伊藤正彦助教授(細菌学)、山口大医学部の山本直樹教授(寄生虫学)らの共同研究でエイズに効く漢方薬確認と発表。
 10月 アメリカNCIのギャロ博士、フランス・パスツール研究所のワクチン会議に出席。

1987
 イギリスのポートンダウン基地国防研究所特設実験室で過去25年間にわたって志願兵士に毒ガスの人体実験をしていたことが発覚。
 フランスのピエール、マリー・キュリー大と、ザイールのキンシャサ大などの共同研究チームによりエイズワクチン開発。志願者に注射。
 1月31日 遺伝子組み換えで製造された「ヒト成長ホルモン」の日本輸入承認。住友製薬がスウェーデンのカピ社から輸入。
 2月4日 エイズの検査薬、機器など開発競争。大日本製薬(対アメリカ)、三共(対オランダ)、日本サノフィ(対フランス)がそれぞれ輸入販売。
 3月 労働者がGBガスをあびる事故がアメリカ・ジョンストン島で発生。
 3月20日 アメリカ食品医薬品局(FDA)がNIHの満屋裕明博士が発見(1985年3月)したエイズ治療薬を承認。
 3月25日 厚生省の中央薬事審議会バイオテクノロジー特別部会が、東洋醸造、キリンビール、中外製薬、東洋紡バイオテックに遺伝子新薬製造を認可。
 3月25日 アメリカFDAが医薬品メーカー、ブリストル・マイヤーズ社にエイズワクチンの臨床試験開始を認可。
 5月29日 アメリカ厚生省がエイズ治療薬DDC(ジデオキシチジン)の開発製品化の独占権をホフマン・ラ・ロッシュ社に認可。
 5月30日、日本の化学薬品審議会は遺伝子組み換え技術を利用したバイオ製品の工業生産を認可。
 8月 フランクフルトでギャロ博士とモンタニエ博士が「ウイルス発見の功績は半分ずつ」と確認し、和解する。
 8月8日 米コネチカット州ウエストへブンの薬品会社マイクロジェネシス社とアメリカ・アレルギー感染症研究所が協力開発したエイズワクチンの人体実験をFDAが認可。NIHの臨床センターで実施。
 8月12日 日本ウェルカム社のエイズ治療薬の輸入を承認。
 9月23日 ブラジルのゴイアス州で閉鎖された病院に放置されたセシウム137による放射能汚染事故。
 10月15日 南アフリカ政府が推定50万の外国人労働者(主にマラウイ出身者)のうちエイズに感染した者を本国に送還する規制。
 12月16日 アメリカ陸軍がアーカンソー州の化学工場でバイナリー兵器(神経ガス)の製造再開。
 12月27日 イランが化学兵器製造を公認。

1988
 1月21日 アルゼンチン・ブエノスアイレス南方アスル近くのNIHが支援する「米州保健機関」の米州原生動物感染症センターの農場内で遺伝子組み換え実験のため、5人の農業労働者が感染事故。
 3月16日 イラン軍がイラク北東部クルド人の町ハラブジャを化学兵器で攻撃。4000人死亡。
 4月7日 NCIのギャロ博士とパスツール研究所のモンタニエ博士が共に日本国際賞受賞。




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