“枯渇している”と感じるものがあると、作品ができあがる。
─椎名林檎名義としての活動も再開されて、さらに東京事変としてのバンド活動もありますが、今年はどのような活動をしていくのでしょうか。
計画している活動をやっつけていくという事も必要ですけど、できればゆっくり蓄えたり休んだりということをきちんとしながら、こつこつと一人の世界を作り上げていく事が必要だと思っています。最近はどうしても出力が多かったということが御座いまして。 今は人や機会に出会ってしまう事へ、自分が追い付かないまま、なんとか走っているという感じですね。
─いろいろな出会いから触発される部分が多いとは思うのですが、それをうまく自分の中に吸収して、常にオリジナリティのある作品を生み出していますよね。椎名林檎は、やはり変わらず椎名林檎テイストというか。
そうですか? 頑固なのかな。でもそう言っていただけると有り難いです。常に必死なので、自分ではわからないんですけど。
─曲を作るモチベーションは、どういうところから出てくるのですか?
色々世の中にある良いものを吸収していって、おこがましいながら世の中に枯渇していると感じるようなものが有れば、「じゃあこういうものがあればいいのかな」と思うと出来るという感じが多いですね。例えばこんなライブが見たいと感じたら、そのイメージで作品を作ったり。
「もうiPod買ってあるから」と言って口説くんです。
─話をiTunesに戻しますが、林檎さんはアルバムの曲のタイトルの表記をシンメトリーにされているなど、細かい部分にいたるまでパーフェクトにパッケージされていますが、一曲ごとに曲を聴くというユーザーのニーズに対してはどう考えられていますか。
自分がユーザーとして聴く場合、そういった聴き方をあまりしないものですから、ある時期まで抵抗が有りました。繋がっている流れを切って仕舞うのが自分は気持ち悪いと思っていたのですけど、今は発信側として、ニーズが有るならそのニーズに合ったものを作りたいと思うようになりました。シングルカットとアルバムでは情報量も違いますから、それに合わせてマスタリングの段階で仕上げていけば良いのかなと思っています。 ただ、やはりアルバム全体を通して楽しんでいるユーザーさんもいらっしゃるし、アルバムとシングルでそれぞれ別の楽しみ方をしていらっしゃるのだと思いますので、アルバムに関してはアルバムとしてのクオリティをきっちり出したいと思っています。
─林檎さん自身はiTunesをどのように利用しているのですか。
CDを買って来て入れることが多いですね。それと、ライブの客入れBG(ライブ開始前、会場で流れる音楽)のようなものをプレイリストで作成して、CDに焼いてライブスタッフにお渡しするというような利用の仕方もしています。
─iPodもお使いなのでしょうか。
今は3台目ですが、スタッフの人や知り合いのお祝いがあると必ずiPodをプレゼントしているので、もう自分で何個買ったかわからないですね。メンバーを誘う時にも「もうiPod買ってあるから」と言って口説くんです(笑)。
─この先MacやiPodで、こんな事ができたらいいなと思うことはありますか。
iTunesの影響も凄く大きいと思うんですけど、今はCDというメディアが過渡期です。ですのでアップル発信で、ハイスペックなメディアを提案して頂きたいという気持ちはあります。アップルがCDに変わる次世代メディアに関して、考える余地をお持ちなのかというのも知りたい処です。興味は尽きないですね。
─ありがとうございました。
(2007.2.5 Apple Store Ginzaにて)
(インタビュー:伊藤なつみ)
Profile
- 椎名林檎
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98年シングル『幸福論』でデビュー。以降4枚のアルバムを発表。03年バンド東京事変を結成。06年1月に発表した2ndアルバム『大人』がチャート1位を獲得。このたび映画『さくらん』で音楽監督に初就任。他の追随を許さない唯一無比の世界を表現する音楽家。
Special Movie
iTunes Store
- 椎名林檎x斉藤ネコx椎名純平
この世の限り
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Information
- 椎名林檎x斉藤ネコ
New Album
平成風俗
2007.2.21発売通常盤:¥3,059(税込)
初回限定盤:¥3,360(税込)
- さくらん
安野モヨコ原作、吉原遊郭・玉菊屋を舞台に繰り広げられる女と男たちのドラマ。音楽監督は椎名林檎
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