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現在の弁護団は、控訴審で組まれた。菅家さんの支援者が、DNA鑑定に詳しく再審事件の弁護経験もあった佐藤博史弁護士(60)に直談判し要請した。
弁護団は現地を歩き、調査を重ねた。自白の矛盾点が次々と浮かんだ。移動経路の見晴らしはいいのに目撃者がいない、自白のように暗闇で犯行を終え移動するのは不可能、自白を裏付ける物証はない……。無実の確信を深めた弁護団は、DNA鑑定が自白を支える唯一の証拠として、その正確性と信用性を徹底的に争った。だが、東京高裁は96年、自白と鑑定双方の信用性を認めた。
97年、弁護団は日本大医学部の押田茂実教授に独自の再鑑定を依頼。菅家さんの毛髪を基にした結果は「遺留物と一致しない」だった。上告審で正式な再鑑定を請求したが、最高裁は通常、新たな証拠調べをしない。再審請求でも宇都宮地裁は再鑑定を行わなかった。結局、裁判所が再鑑定に踏み切るのは高裁段階の08年12月だった。
「裁判所は矛盾を見抜くべきだった。ただ、我々がもっと早く再鑑定できることに気付いていれば、控訴審で無実が明らかになっていたはず」。佐藤弁護士は悔いる。
毎日新聞 2009年6月6日 東京朝刊