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19年目の真実:検証「足利事件」/中 険しかった再鑑定の道(1/3ページ)

 「やっていません」。起訴から1年がたった92年12月、菅家(すがや)利和さん(62)は宇都宮地裁での第6回公判で、それまでの「自白」を、突然翻した。騒然となる法廷を、弁護人だった梅沢錦治弁護士(78)は複雑な思いで見つめていた。

 91年12月の逮捕直後、菅家さんの家族に依頼され、弁護を引き受けた。菅家さんと信頼関係を築こうと世間話を繰り返し、3度目の面会で切り出した。「やったのかい」。菅家さんは「うん」とうなずいた。

 殺害された女児の下着についた体液と菅家さんのDNA型が一致した鑑定には疑問を持っていたが、起訴内容を認める前提で弁護活動を始めた。

 無罪主張に転じた3日後、菅家さんは「女児の両親が極刑を訴えているのを聞き、怖くなって『やってない』と話した」と関与をほのめかす上申書を地裁に出す。判決直前の93年5月には梅沢弁護士に手紙を送り、再び「やっていない」と訴えた。

 二転三転する供述。梅沢弁護士は今でも、理由が分からず思い悩む。「確かに人の意見に左右されやすい部分があった。『やってないんだろ』と聞けば、『やってない』と答えたかもしれない」

川崎達也・日弁連副会長(右)と握手する菅家利和さん=東京・霞が関で2009年6月5日午後、梅田麻衣子撮影
川崎達也・日弁連副会長(右)と握手する菅家利和さん=東京・霞が関で2009年6月5日午後、梅田麻衣子撮影
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毎日新聞 2009年6月6日 東京朝刊

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