民主党代表の鳩山由紀夫氏と、実弟で総務相を務める自民党の鳩山邦夫氏が7日、福岡県内でそれぞれ街頭に立ち、次期衆院選をにらんで熱弁を振るった。代表就任で党勢を盛り返し政権交代を語る由紀夫氏に対し、邦夫氏はかんぽの宿の投げ売り問題で、これを痛烈に批判するなどして国民から大きな支持を受けた。「友愛」の理念で一致し、選挙後の兄弟連携もささやかれる2人だが、この日は、政権選択の戦いを前に、麻生太郎首相のおひざ元で微妙なさや当ても演じた。
福岡市中央区の警固公園。連合福岡など主催の総決起集会に駆け付けた由紀夫氏は約2500人を前に声を上げた。「定額給付金に使った2兆円があれば100万人の雇用をつくれる。皆さんはいいが、首相や邦夫に(給付金)はいりません」
これに先立ち、同市であった連合関連の会合にも出席。前日、広島市での講演で自身が「永田町で2羽のハトが首相を突っついている」と述べたことに触れ、「私はもう1羽の肩を持つつもりではない。(首相と邦夫氏は)2人とも福岡の方。福岡の中でなぜ閣内不一致が続くのか。実に嘆かわしい」と述べた。
一方、弟の邦夫氏。地元選挙区・久留米市の商業施設前で演説に立ち、「兄は小沢(一郎)さんのことを大嫌いだと言っていたのに耐えに耐えた。我慢強さには脱帽だ」とチクリ。「最近2羽のハトがどうとか言われるが、それが話題になるのは間違いだ」。兄弟がセットで語られることに不快感を示した。
曾祖父が衆院議長、祖父が首相という政治エリート家庭で育った2人。1996年、ともに民主党の旗揚げに携わったが、邦夫氏の離党でたもとを分かった。時に批判し合いながらも、昨年は共同で次世代リーダーを養成する「鳩山友愛塾」を創設するなど微妙な距離感を保つ。
「麻生首相の側近」を自任する邦夫氏は常々、「私は永遠の政界再編論者」とも公言。閣内の火種になっている日本郵政の社長人事に関する立ち回りも、「兄弟新党など総選挙後の政界再編を見据えた動きでは」との憶測を呼ぶ。
この日、北九州市でも街頭に立った由紀夫氏だが、「敵将」として弟の選挙区に足を踏み入れることはなかった。「2人の母が止めている」と民主党関係者。「夏決戦」が有力視される次期衆院選。2人の帰京の便が同じになったのは偶然か、それとも‐。
=2009/06/08付 西日本新聞朝刊=