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今回の選挙の隠れた功績が認められ、コミ戦は選挙終了後も解散せずに、今後週1回のペースで継続して会合を行うことを武部幹事長は了承した。もっとも、党内の一部のベテラン議員、ベテラン職員からはコミ戦に対する強い反発があることも確かだ。
「データがすべてではない。政治は人間が行うものだ。時には情で動くことも大事だ」(自民党元議員)
「コミ戦のメンバーの中には、選挙経験も浅く、若い者も多い。それが幹部にあれこれ指示するというのはいかがなものか」(自民党職員)
世耕は、こうした批判は“織り込み済み”だと意に介さない。
「今回、どさくさ紛れで好きにやってやろうと思ったのだから、批判も当然覚悟してますよ(笑)。でも、成果は確実にあったし、新人や若い候補者からは感謝もされた。一歩は踏み出せた」
それにしても――。今回の取材を通じて選挙の舞台裏で起こっていた真実をつかむたびに背筋が寒くなる思いを幾度かした。実は戦略的に練り上げられた刺客候補のセリフ。同じく戦略的に仕掛けられたテレビ出演。そしてそれに気づかず報道していたマスコミ。その情報をそのまま受け取る有権者たち。世耕の広報戦略の根幹にある思想は、性善説に基づくもので、筋はそれなりに通っている。曰く、「政治には、世論の動向をいち早くつかみ、最悪の状態を脱するための“危機管理”が必要。コミュニケーション戦略は決して世を騙したり、嘘をついたりするものではない。国のトップや政党の考えを正確に伝えるための戦略」なのである。
だが、自民党という強大な政権与党が、仮に悪意を持って、党が一丸となって広報戦略を仕掛けてきたときに、世論が政党に都合の良い方向へ誘導される危険が生じる可能性も否めない。今回敗れた民主党も次回からは本格的なコミュニケーション戦略を行ってくるだろう。その場合メディアは、取材者がいかにその意図を見破り、現場で真偽を確認し、是々非々で報道する力を持てるかが試されることになる。
今回の選挙の最大の特徴は、自民党大勝にあるのではない。ジャーナリストの立場から自省もこめて総括すれば、コミ戦という広報戦略が今回確立されたことで、今後の選挙は候補者の一挙一動や政党の主張にもっと目を光らせ、世論誘導を監視していくという、新たな覚悟を迫られることになったのではないかと思うのである。
(文中一部敬称略)
すずき・てつお 58年生まれ。テレビ西日本、フジテレビ政治部を経て現在は衛星放送「朝日ニュースター」報道制作部長。主著に『東京政界地図』
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