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松田聖子&SAYAKA
マスコミを味方に
 ここ数年、選挙のたびに自民党はマスコミ、とりわけテレビとの関係をこじらせた。「民主党に偏っている」「自民党を批判しすぎている」といった具合にだ。だが、支持率の低下をなんでもメディアのせいにしてしまう自民党内の空気を、世耕は常々間違っていると感じていた。
「マスコミに対しての総合的な戦略が欠けていることが問題だ。むしろ、マスコミをどう味方につけ、演出していくかが重要だと思う」
 前述したように、毎朝、コミ戦会議のテーブルに積まれたデータの中には、前日発売された新聞・週刊誌の選挙関連記事がある。この一言一句をメンバー全員で読み合わせるのである。
「この評論家のコメントだが、彼は自民党には好意的なのに、今回の郵政のくだりの事実関係が多少違っている」
 すぐにスタッフ2人が資料を携えて、その日のうちにくだんの評論家に会い“ご進講”を行う。
「この政治面の記事は事実関係に誤解がある」
 やはり、すぐさま2名のスタッフが記者クラブに出向き、当該紙のキャップに「事実関係はこうなんですよ」と説明を行う。コミ戦のメンバーに近い関係者が証言する。
「これまで自民党が行っていた抗議とは明らかに違います。『ご説明させてほしい』と、紳士的にやりとりする。後の信頼関係にもつながるし、今後の記事で気をつけて書いてくれるようになりさえすればいいんです」
 テレビに対しては、さらに戦略的に対応した。コミ戦が発足した 10日直後には、すでにテレビ出演を行う幹部のスケジュールが綿密に立てられていた。
〈第1週は、安倍幹事長代理を中心に。第2週はマニフェストも出始めるから政策に強い与謝野馨政調会長や竹中平蔵郵政民営化担当相。第3週から公示にかけて、いよいよ武部幹事長や小泉首相を登場させる……〉
 放送された番組は、すべて幹部が何を話したかまで細かくチェックし、問題があればすぐに修正してもらう。また、ある幹部が年金問題について弱ければ、事前にコミ戦からメンバーを派遣し、年金問題についてレクチャーするといったようなことも行った。
 逆にテレビを使って“攻める”ことも実践した。
〈民主党の出演は菅直人だという。ならば、こちらは論客で、かつ冷静に笑顔で対抗できる竹中をぶつける。竹中が淡々と説明していれば、“イラ菅”と言われるほど短気な菅は我慢できなくなって興奮する。竹中は視聴者に好印象を与えることができる〉
〈民主党の川端達夫幹事長はテレビ慣れしていない。テレビ局から討論会の出演依頼があった場合、「こちらは武部を出すから、民主も幹事長を出さなければバランスが取れない」と交渉し、川端幹事長をテレビに引っ張り出す〉  民主党が聞いたら怒り出すような、こんな「議論」がコミ戦では積極的に行われていた。今回の選挙で、いかに自民党が組織的、戦略的にメディアを味方につけようとしていたか――その好例であろう。



追いつかれつつあった自民党
 ほぼ思惑通りに、広報宣伝戦略を推し進めていたコミ戦。だが、一度だけ党の存亡に直結しかねないほどの大きな決断を迫られたことがある。表向きには、一貫して自民有利に流れていたかのように見える選挙戦で、実は大きな“潮目”が訪れていたのだった。
 公示日の8月 30日を目前に控えた28・29両日、コミ戦が毎日極秘に実施していた有権者の意識調査が衝撃的な結果を出してきたのである。それは、
「国民の関心事は、それまでは『郵政』がダントツだったのに、この二日間で『年金』が肉薄、日を追うごとに差が狭まりつつある」
 という内容だった。
 8月末までは小泉の“郵政戦略”が奏功し、世論調査でも改革イメージを前面に押し出した自民が民主を大きくリードしていた。ところが、民主党が「すべての年金一元化」をマニフェストに明記し、地道に争点として訴え続けた結果、造反・刺客騒動に飽き始めた有権者の心に徐々に響きつつあったのである。
「年金が郵政を超える。民主に追いつかれ、追い越される選挙区がボロボロ出てくる」
 コミ戦の議論は緊迫し、時折、部屋中を重苦しい空気が支配した。そしてついに 29日、コミ戦のメンバーは「年金」にシフトする準備にとりかかることを決断したのだった。
 これまでの郵政一本から年金に一気に変更しなければならない。ポスターも新聞広告も、候補者の訴えもすべてである。しかも年金という争点を自民党が国民に強くアピールするためには、それなりのタマも必要だ。だが、今から新たに盛り込むための政策を政務調査会で党内論議する時間はない。
 ここで世耕は勝負に出た。なんと、それまで〈厚生年金と共済年金の一元化を目指す〉とされていた自民党の公約を独断で修正し、〈一元化は来年秋に実現する〉と時期を明記した新たなマニフェストを作ったのである。コミ戦の関係者がそのときの様子をふりかえる。
「マニフェストの変更案は執行部にも相談しなかった。小泉さんにも言ってない。いよいよ郵政から年金に切り替えるというときに、この新マニフェストを世耕さんが官邸に持って行って、『これをやらなければ自民は負けます。呑んでください』と直談判するつもりだった。小泉さんがそこで『ノー』と言えば、メンバー全員が責任を取るハラを決めていた。われわれは、この案を“年金ダマ”と呼んでいました」  マニフェスト、特に政権与党の場合、政策に時期や目標を織り込むことは大変な重みを持つ。実現できなければ即政権の責任問題に発展するからだ。一元化をうたいながら期限を明示していない民主のお株を奪う大胆不敵なプランだった。

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