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きょうの社説 2009年6月7日
◎百万石行列 脇役に「前田慶次」登場も一案
百万石行列に新しい風を吹き込むなら、たとえばゲームや漫画で人気のある前田慶次(
慶次郎)あたりを脇役として登場させたらどうだろう。近年の戦国武将ブームは、百万石行列、さらには「城下町」の魅力を生かした都市づくりを進める金沢にとっても絶好の追い風である。このブームを生かさない手はない。ゲームソフトや漫画、大河ドラマの影響で「歴女(れきじょ)」と呼ばれる歴史好きの 女性や戦国武将に詳しい子どもたちが増えてきた。武将が美形のキャラクターとして描かれ、現代人にはみられない忠義や筋を通す男の生き方に若い女性も共感するらしい。戦国武将への関心は関連書籍や人形、家紋入りグッズの収集、さらには城や古戦場めぐりへと広がりをみせている。 そうした流れのなかで行列を位置づければ、来年以降もまだまだ改善の余地がある。改 革4年目の今年も入城祝祭の時間を繰り上げるなど「見せる工夫」がみられたが、マンネリを避けるには常に新しい発想を取り入れ、ワクワクするような話題性がほしい。 前田慶次は藩祖利家の義理のおいで、越中氷見阿尾城主を務めたが、前田家を出奔した 後、上杉景勝に仕え、直江兼続と親交を結んだ。派手な衣装を好み、常識にとらわれない「かぶき者」として知られ、その痛快な生き方は歴史小説や漫画に描かれ、ゲームソフトでも人気を誇っている。前田家ゆかりの武将のなかでも異色であり、行列を彩るにふさわしい人物である。 利家を取り巻く人物は信長、秀吉、家康の天下人のみならず、多彩な歴史群像を描く。 利家自身も大河ドラマで知名度が上がり、「百万石」の礎を築いた武将として根強い人気があるが、魅力的な武将たちのなかで利家や前田家を位置づければさらに存在感が引き立つ。行列の顔ぶれも固定化させる必要はないだろう。 全国に数ある武者行列のなかでも、百万石行列が最も見ごたえがあるとの評価が定着す るよう今後も見直しが欠かせない。その積み重ねによって、行列は金沢の魅力発信の強力な武器になる。戦国武将ブームを「金沢ブーム」につなげる視点が大事である。
◎温室ガス削減目標 手堅い数字にとどめたい
政府が策定中の温室効果ガス削減目標(中期目標)は野心的であるより、現実的な手堅
い数字を目指すべきだ。高い数字を掲げれば一時的に評価されても、コスト増を余儀なくされる日本企業の競争力は低下し、目標が未達なら「排出枠」を他国から買わされる。野心的な目標は、国民に重い負担を強いる可能性が高いことを忘れてはなるまい。政府が提示した1990年比4%増〜25%減の6つの目標案のなかで現在、「7%減 」とする案が有力とされる。経団連は、日本のような省エネ先進国で、さらに排出削減を進めるのは困難を伴うとして、国際的な公平性の観点から「4%増」を主張している。 7%削減のために日本が負担する経費は、旧東欧諸国を抱える欧州連合(EU)の20 %減に必要な経費の二倍以上になるという。同一産業でも、かかるコストに大きな差があり、日本企業は著しく不利な立場に置かれる。まして削減目標のない国の企業であれば、なおさらだ。4%増ではEUが目標とする「20%減」や米国の「±0%」に比べて大きく見劣りするというなら、「1%増−5%減」とする案を検討してはどうか。 日本企業は、CO2削減のために多額の投資をしても、成果はごくわずかで、それに見 合う利益が得られない。企業にとって、収益増やコストダウンに結びつかない技術革新の努力ほどむなしいものはなかろう。そうして乾いたタオルを絞るように世界一の省エネ技術を磨いても、お隣には中国のように、大量のCO2を発生させている国がある。 無理に高い目標を決めても、達成できなければ、海外からの排出量を購入しなければな らず、そのツケは民間企業や国民が負うことになる。京都議定書を結んだばかりに、日本は排出枠の購入費として、これまで官民合わせて一兆円近くを支払ったといわれる。 CO2削減の美名の陰で、環境を「商売」にしている国や企業がある。「低い目標を出 したら世界に笑われる」などという言葉を額面通りに受け取ると、またぞろ国益を損なうことになりかねない。
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