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新型インフル 国内発生から1カ月 生活直撃 思わぬ課題

 国内感染者の拡大により、学校や高齢者施設などが次々と休止に追いこまれ、市民生活の隅々にまで影響を与えた新型インフルエンザ。企業などは大規模な感染防止策をとり、観光に深刻な打撃を受けた自治体では次々と「安全宣言」を発するなど対応に追われた。政府の新型インフルエンザ発生宣言から1カ月以上が経過したが、6日には大阪市で小学1年の男児(6)や山口県萩市で男児らの感染が確認され、国内の感染者は計420人に。新型インフルエンザがもたらした課題を検証した。

 ●情報が欲しい

 重度の障害者が通う大阪府箕面市の市立障害者福祉センター「ささゆり園」。感染防止のための休業中は、家族に仕事を休んでもらうなどして対応した。加藤隆之園長(49)は「休業が1週間なので対応できたが、長期化した場合、命にもかかわる」と訴える。

 児童8人が感染した大阪府八尾市の小学校2校では、児童の間での「感染者探し」などを警戒。いまも臨床心理士を配置している。

 感染発生時の情報不足も深刻で、最初に感染が伝えられた5月17日夜から、児童名などを最終確認できた翌朝にかけて、保護者などからの電話が殺到した。校長は、府や保健所から感染者に関する情報提供がなかったことについて「プライバシーの問題は理解できるが、正確な情報が早く欲しかった」と振り返る。

 ●過剰反応も

 感染拡大は経済活動も直撃し、大規模な防衛策をとる企業も現れた。

 行員に感染者が出た三菱東京UFJ銀行の三宮支店(神戸市)では、一部の幹部職員を除く約60人を自宅待機とする思い切った対応を取った。ただし今後発生した場合については、政府が冷静な対応を要請しているため、「そのつど適切に判断したい」(広報部)と柔軟な姿勢を示す。

 駅にキヨスクを展開するジェイアール西日本デイリーサービスネット(大阪市)も従業員の感染を受け、感染者が出る可能性のある8店舗を休業とした。同社は「過剰反応との意見もあるが、電車を通じて感染が広がる恐れがあった」と警戒の姿勢を崩さない。

 感染予防の拡大でマスクの販売量も乱高下。大手ドラッグストア・コクミン(大阪)では、ピーク時の先月19日には販売数が前年比100倍に急増し、神戸市内の店舗などでは長蛇の列ができた。いまは落ち着いたものの同5~6倍で推移。同社は「今秋の感染第2波に備えないといけないが、在庫リスクは抱えたくないし…」と頭を抱える。

 ●観光にも影

 観光庁の調査では、新型インフルエンザで修学旅行を中止・延期した学校数は、国内初感染が発生する直前の先月15日の277校から、発生後の同26日には2337校に急増した。

 こうした事態に、神戸市の矢田立郎市長は先月28日、感染拡大の勢いは収まったとして早々と「ひとまず安心」を宣言した。

 この3日前、有馬温泉観光協会が矢田市長と兵庫県の井戸敏三知事に予約客のキャンセルが相次ぐなど、深刻な実情を訴えたことに応えたものだが、一方で市医師会は「軽々に過ぎないか」と難色を示すなど、各界で受け止めが分かれた。

 今月3日に安心宣言を発した井戸知事は言う。「何らかの宣言をしないと、いつまでも誤解を与える」。

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