バブルは繰り返される、漣のように

August
26
2008

 さて、どうも世界中の景気は下向きのようで、特にアメリカの状況はとても悲観的です。大統領選でのナーバスな展開を見ても、アメリカ社会は今後の方向を定めることが出来ず混乱している様子がアリアリと伺えます。現状を打破し変化を求めた結果、アメリカ初の黒人大統領オバマ氏が大きくリードして向かえた終盤、共和党のマケイン候補に一部の世論調査では逆転されているという結果も。こういう現象は、アメリカ社会の混乱の象徴なのかもしれません。実際、明らかに世界は金融バブルに踊っていたというか、サブプライム問題が世界経済減速のトリガーになること自体、異常な状況と言わざるを得ませんから。金融商品に、債権に、不動産に、そして企業に世界中のバブル資金が向かったということ、そしてそれを商品先物市場が煽る煽る。こういう事態をバブルと言うのです。

 

 いまから20年前、日本で起こったバブル経済の記憶は今でも生々しいです。何もかもが異常な状況となり、拝金主義が蔓延していた。しかもそれが正義であるかのように、猫も杓子も投資と消費へ向かう。今では考えられないことですがわかりやすい現象を上げれば、「白いミドルレンジセダン」が年間販売台数でトップに躍り出るという快挙、いや怪挙。地方ではみんなお揃いの白いセダンに乗って悠々街を闊歩する。もちろん都会ではドイツの高級車が当たり前。それもミドルレンジ以下だと肩身が狭い。こうして自動車のことを思い出しているうちに、当時の様子が徐々に蘇ってきました。

 

 僕が営業で取引先を回っていたとき、購買課長が「僕、マンション投資をはじめた。」と。聞けば国内とハワイに12戸を所有しているとか。普通のサラリーマンで、こういう方は何人もいましたね。ある銀行の担当者は、「今度一戸建てを買いました。小さいですけど都内のはずれで1億ちょっと。これは買いだと思って即決でした。」この方とて決して特別に高収入を得ているわけでは・・・。ある取引先銀行の駐車場に赤いフェラーリが一晩とまっていた。翌日出社した行員が中を覗くと、一千万円の札束が助手席に無造作にいくつも裸のまま置かれていた・・・。ちなみにこれは実話です。来社する銀行員が持ち出す話題は、1)ゴルフ場の会員権、2)不動産、3)バブリーな取引の噂話。業務用のバッグのなかにはポラロイドカメラが・・・。真面目に投資や借り入れの話をすると、まともに取り合ってもらえませんでしたね。

 

 ある時、あまりに煩わしかったので、自動車好きの僕が担当の銀行員をからかいました。「赤いフェラーリF40、いま1億5千万位でも3年待ちなんだって。いっそのこと買い付けてくるから融資してよ。10億あれば10台は買える。日本でガス検(排ガス検査)と車検とれば、即倍返しだと思うよ。」「本当ですか?」この程の話は、並行輸入として当時は当たり前のように行われていたけれど、まぁ、完全に冗談話のつもりでした。数日して担当者から電話があり、「書類お持ちしますので!いつでも準備OKです!」と・・・苦笑。

 

 中小企業もそのほとんどがバブルに踊りましたね。不動産取得、社屋移転等々。知り合いのゴルフ場でのこと。プレーの合間にオーナーが「いやいや、今日は4億、今週は12億くらいですか・・・」何の話と思いきや、会員権の増刷販売のこと。一地方ゴルフ場でこんなことが日常茶飯に行われるのがバブル。手持ちの不動産の売買で一夜にして数億円、数十億円を手にしたバブリーな人々の噂は、こんな地方都市で。しかも僕の身の回りでも5人や10人ではきかなかったですよ。こういう状況がバブルなんですね。地方でこれだから、都会ではとんでもないことになっていただろうと容易に想像できます。一晩に数千万をばら撒く不動産業者・・・そんなのごろごろいたでしょうね。

 

 ひとたびバブルとなれば、日本でさえこの状況です。ましてや消費優先主義のアメリカで起こっていた今回のバブルはもう大変な状況であったと通常は考えて差し支えないでしょう。どんな想像をしても、所詮庶民の僕らには及びもつかない状況であるのは間違いない。ニューヨークで証券会社に勤めていたサラリーマンの平均年収は3億円であったとか、トウモロコシを栽培していた農家のご主人は連日カジノで大勝負とか。ポルシェもフェラーリも史上空前の利益!ガソリン価格高騰もなんのその!ありとあらゆる状況が経済の急激な右肩あがりに乗り遅れまいとエスカレートしてゆく。それがバブルと言うものです。さて、それが怪しくなってきた。日本で言うところの不動産融資に対する総量規制が導入された直後のような状況にいま、全世界が直面していると言っても過言ではないのかも。いまや、世界中どこを見回しても、もっとも安定した国は「日本」ということに・・・。世界経済を牽引する役割を果たせるのは、無傷に近い「日本」なのだろうと・・・。こんなに苦しい状況でも、これからのことを考えると我慢して我慢して漁夫の利を得そうな・・・。そうなる確率は意外に高いと思いますよ。

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Posted by 有海啓介 | この記事のURL |