この冬、アメリカ経済最大の危機を迎える Ⅱ

August
23
2008

アメリカの危機的状況

 アメリカの信用収縮と金融不安が止まりません。減税、政府系住宅金融への介入等々当局の必死の防戦にもかかわらず、信用収縮には歯止めがかからない状況となり、実需の減退は深刻な段階へと突入してしまいました。FRBの低金利政策が裏目に出た格好で、各物価指数の上昇に歯止めがかからず、インフレ経済へと突入してしまったことは、予想された事態とはいえ致命的です。そして、ドル不安から原油等商品先物へシフトした過剰流動性資金は、世界経済の低下懸念から再び行き場をなくしており、ドル買戻しへと右往左往の動きとなっています。しかし、膨大なアメリカの貿易赤字によるマネーサプライ不足を補う手段としての投資資金流入策は、サブプライム問題で大きく揺らぎ、不動産バブル、代替エネルギーバブルの崩壊とともに破綻しており、信用不安は債権市場や個人クレジットを侵食している現状では、「ドル高」はまさに命取りとなるでしょう。アメリカ経済は、この冬、最大の危機を迎えるという懸念はもはや、回避することは出来ないと思います。秋以降、第一波として予想される金融機関の破綻や債権の下落は不可避でしょうし、それを凌いだとして待ち構える第二波は最も深刻な実需の衰退にともなう経済の泥沼です。膨大に膨れ上がった過剰流動性資金のクランチをリカバーする政策は、現実的に不可能であり、ひとたび公的資金の導入へと政策が傾くならば、それは日本のバブル崩壊の感覚では及びもつかぬ膨大な規模となる可能性があります。

 

中国の懸念

 アメリカ経済の混乱によって最も影響が出るのは、間違いなく中国経済です。オリンピック後の急激な縮小懸念のある中国経済は、アメリカ国内の実需の減退によって計り知れない打撃を受けることはまず間違いありません。その結果、中国経済において信用収縮が急激に起こり、華やかな資本主義化は終焉を迎える可能性もあります。北京オリンピックでのアメリカへの急速な接近姿勢が話題となっていますが、もはや経済的にはアメリカと中国は生産と消費、マネーフローの同盟国として表裏一体の関係にあります。現在の中国株式市場の低迷は、企業業績と将来性への正当な評価と言え、それを支えるのは投資資金の拡大ではなく実需であるということを示していると思います。

 

欧州と日本

 欧州経済の減退は指数的に見るとアメリカ経済よりも急速に推移していると思われますが、個人信用への影響ははるかに低いために、実需への影響は小さいと考えられ、その結果ユーロ高を演出しています。これは、正当な評価であると思われ、また日本国内では信用収縮は起こっていないレベルと判断されています。したがって、内需シフトという切り札を持っており、この秋からの経済政策がキーとなることは疑う余地はありません。世界的な金融不安を日本が乗り切り、回避する唯一のタイミングはこの秋であると思われます。

 

                    某メディア寄稿原稿より

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Posted by 有海啓介 | この記事のURL |