August
22
2008
約2000兆円といわれるアメリカの個人向けローン残高のうち、住宅関連は約1200兆円。現時点ではこの約1/4の残高で返済不履行が生じつつあると言われていて、今後さらにこの数字は増え続けるというのが正当な予測でしょう。日本のバブル崩壊と大なり小なり事情は同じですね。米政府は見せ掛けの減税処置でお茶を濁していますが、ソフトランディングさせようというのなら、固定資産税(日本の約10倍水準でたいていの場合、ローン返済額と同等規模です)減税以外に有効な手立ては無いのです。すでにプライムローンにまで深く影響の出ている今回の信用不安ですから、ここに切り込む以外に無いわけです。しかし、残念ながらいまだに政府系金融機関救済というレベルで対策されてしまうのは、この問題が完全に後手に回っていることの証拠でしょう。当然のことながら、住宅ローンのクレジットを失うということは、約800兆円の住宅ローン以外のクレジットに大きく影響します。アメリカの個人消費が壊滅的な打撃を受けているのは、実は消費の実需に影響するこのようなクレジットが失われるためなのです。
この悪夢が起こるとすれば、トリガーはアメリカ地方債である可能性が非常に高くなってきています。今後数年間、現在の地方財政を維持しようとすれば大幅な地方債の発行を余儀なくされます。しかし、数千兆円規模といわれるアメリカ地方債のクレジットを維持することは至難の業。債券市場が本格的に変調をきたせば、公募割れは必至。そうなると地方債の格付けに言及せざるを得なくなり、その影響はサブプライム同様に債権市場に急激に広がるでしょう。ですからアメリカ政府は安易に利上げ転換することは出来ません。すなわちそれは、インフレ対策を封じられているのと等しく、それを見越して、先物市場で傍若無人に振舞う投機資金は、膨大な利益を貪るでしょう。ブッシュ大統領とは、石油業界の利益のために国を売る狂人!?なのかもしれないです。
原油価格の高騰がいかにアメリカ人の生活に影響するかは、この冬端的に現れるでしょう。ミネラルウォーター並の価格だったガソリンや灯油がすでに¥100-台/リッターに突入しています。アメリカの半数の人々の生活はこの状態では成立しないでしょう。日本の感覚では理解不能な冷暖房等生活設備は、石油を垂れ流すことによってのみ成立するのですから。そしてインフレが加速されることになる。そこでアメリカ政府は必ず為替介入に出るはずです。いや、政策的な介入、すなわち「ドルの切り上げ」であり従来の政策で切り抜けようとするはずですが・・・。
アメリカ経済は、ありとあらゆる物がバブルとなってもまだ追いつけないほどの過剰流動性資金によって支えられてきました。しかし富の集中というのはいつの時代でも、強者が弱者を搾取する構図でしかありません。世界的な格差が非常に問題になっていますが、実はもっとも深刻な格差と搾取が行われているのが、アメリカ国内であるということであり、多くのアメリカ国民はそのことを明瞭に意識せざるを得なくなるはずです。こうして虚構の金融資本主義の終焉をこの秋迎えることになるでしょう。
某メディア寄稿原稿より
Posted by 有海啓介 | この記事のURL |