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働くナビ:非正規労働者支援で「第2の安全網」が拡充されます。

 ◆非正規労働者支援で「第2の安全網」が拡充されます。

 ◇「失業=生活保護」防ぐ 3年間の時限措置で

 ◇職業訓練の拡充/最大20万円の生活支援…

 27日に国会に提出される09年度補正予算案に盛り込まれた雇用対策で、雇用保険に次ぐ「第2のセーフティーネット(安全網)」と呼ばれる非正規雇用労働者への支援策が注目されている。雇用保険に加入できず失業手当を受けられない人が、失職と同時に「最後の安全網」と言われる生活保護を受けなくとも済むようにする仕組みだ。7000億円の「緊急人材育成・就職支援基金」を設置し、雇用保険から漏れた人の就職を支援する。

 基金による支援は、職業訓練の拡充と訓練中の生活支援の2本柱からなる。

 現在の職業訓練は、基礎的知識を身につけている人でないと受講するのが難しい。このため、新たに「初級編」に当たる訓練メニューを導入し、徐々に技術を習得して就職できるよう支援する。

 訓練中の生活費は現在、最大で月額12万円の貸付制度しかないが、今回、月10万~12万円の給付制度を新設する。そのうえで上限月8万円の貸し付けも設け、最大20万円の支援を受けられるようにする。基金とは別枠で、最長6カ月間、家賃(地域ごとに上限あり)を支給する住宅手当なども設ける。

 ●普及進まず

 雇用対策は08年度の1、2次補正予算でも拡充してきた。訓練中の生活支援を始めた当時(昨年4月)は月に4万6200円の生活費を貸し付けるだけだったのが、11月には上限を10万円にアップし、訓練終了後半年以内に就職すれば返還を免除するようにした。今年1月からは12万円に増額し、対象を派遣労働者(過去1年以内に離職)にも広げた。

 しかし、依然普及していないのが現状だ。拡充後の昨年11月から今月24日までの申請件数は、わずか104件。貸し付けが決まったのは65件に過ぎない。厚生労働省は、昨年10月から今年6月までに19万人を超す非正規労働者が失職する(した)とみており、実際に制度を利用した人との差はあまりに大きい。

 ●「効果は不透明」

 ある自治体の生活保護の相談窓口に、妻と子供のいる男性が生活保護の申請相談にやってきた。男性は職業訓練中の生活費、月10万円の貸し付けを受けていたが、「10万円では苦しい」と生活保護を申請したという。

 結局、住宅・医療扶助もある生活保護の方が「第2の安全網」より手厚いことが判断材料になったという。元ケースワーカーは「既存の制度の拡充では効果は不透明だ」と疑問を投げかける。それでも、雇用保険と生活保護のすき間を埋める議論が出てきたことは評価しているという。

 ただ、今回の対策は3年間の時限措置だ。一時しのぎでない安全網構築に向けた議論は、今後も必要となる。【鈴木直】

 ◇雇用保険未加入者増加に対応

 政府が「第2の安全網」の整備に乗り出すようになった背景には、非正規雇用労働者の増加で、雇用保険ではカバーできない人が増えている事情がある。

 3月31日の雇用保険法改正で、雇用保険の加入要件は、それまでの「1年以上の雇用見込み」から「6カ月以上」に、失業手当を受け取るのに必要な加入期間も「1年間」から「6カ月」にそれぞれ短縮され、派遣労働者も加入しやすくなった。ただ、厚労省の試算では、法改正によって新たに雇用保険の加入対象となるのは、未加入者1000万人のうち150万人程度にすぎない。

毎日新聞 2009年4月27日 東京朝刊

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