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社説:10年度予算建議 大盤振る舞いの総括は

 10年度政府予算編成作業が実質的に始まった。財務相の諮問機関である財政制度等審議会の「10年度予算編成の基本的考え方」(建議)が言うように、日本の財政は景気後退に伴う税収減や一連の景気対策も加わり、極めて危機的状況にある。その一方で、歳出面では社会保障を中心とした国民の安心のための施策や温暖化対策など懸案が山積している。

 10年度予算編成に向けては、どう歳出のメリハリを利かせるのか、財政状況悪化をいつ、どのような道筋で改善させるのか、国民に示さなければならない。その点からいえば、今回の建議は不十分である。

 第一に、実質的に財政審も容認した形で進められた昨年秋の08年度補正予算、09年度当初予算、同補正予算の総括がなされていない。たしかに、一連の経済対策を緊急避難的、一時的な措置と認識し、その効果の検証を求めている。

 これだけでいいのか。財政審は予算編成や財政運営のお目付け役と言われている。大盤振る舞い、ばらまきと批判されているこの間の経済対策に関して、厳しい意見を突き付けるなどすべきだった。

 一般的な検証だけでは甘過ぎる。

 第二は、11年度の国、地方を合わせた基礎的財政収支黒字化が困難な下で、財政健全化をどのようにして進めていくのか、国民に選択肢を示していないことだ。当面は景気配慮型の政策を続け、景気回復を確認した後、厳格な財政規律を確保するとはいうものの、どの程度の時間軸を想定しているのかわからない。

 経済財政諮問会議では民間議員を中心に、今後10年程度を視野に入れ、国内総生産に対する債務残高比率の安定化、さらに進んで引き下げが提案されている。そこで、毎年度の予算編成を射程に置いている財政審は、10年度の歳出、歳入のギャップ拡大にどう対処するか、さらに、11年度以降、それをどう解消していくのか、明快に提案すべきだ。財政規律の一言で済むことではない。

 第三は、歳出改革への意欲に欠けていることだ。歳出規模が拡大している社会保障関係では、抑制や削減に向けた提案がなされているが、公共事業には触れられていない。費目を超えた歳出構造の見直しも行われていない。一律削減では国民のニーズに合致した予算にならないことは、ここ数年の経験でも明らかになっている。10年度も税収は厳しく、国債に依存した予算にならざるを得ない。それだけに、真の意味の歳出改革が必要である。

 財政の健全化、持続可能性という以上は、歳出、歳入ともに踏み込んだ検討が必要である。辛口の建議はどこに行ったのか。

毎日新聞 2009年6月7日 東京朝刊

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