訓練をすれば、ハトも人間と同様に上手な絵と下手な絵を見分けられることを、慶応大学文学部の渡辺茂教授(実験心理学)が突き止めた。同大学が5日、発表した。
研究には慶応幼稚舎(小学校)の児童が描いた絵を利用。評価「A」の絵と「C」「D」の絵を一般成人10人に見せて、図鑑や写真集などからそのまま描き写したような、対象物が分かりやすい「上手」な絵のグループと、一見すると何を描いているのか分かりにくい、稚拙で「下手」な絵のグループに分けた。
その上で、4羽のハトに対し、スクリーンに映した上手な絵をつつけば餌を与え、下手な絵をつつけば餌を与えないという訓練を1カ月程度続けた。その後、訓練時とは別の絵を使ってテストしたところ、4羽すべてが「上手」な絵だけをつついたという。
ハトは視覚認知能力に優れた動物であることが以前から知られており、米ハーバード大は1964年、人間が写っている写真と写っていない写真の識別実験に成功。渡辺教授も95年、今回と同様の手法で、モネとピカソの絵を区別させることに成功している。
慶応大は「芸術活動は人間に固有なものと考えられてきたが、今回の実験では訓練次第でハトも内容を区別でき、高次な認知機能を持つことを示した」としている。【井上俊樹】
毎日新聞 2009年6月6日 東京朝刊