次世代の環境対応車として注目を集める三菱自動車の電気自動車「i―MiEV(アイ・ミーブ)」が公開された。自動車メーカーによる本格投入は世界初であり、走行中に二酸化炭素(CO2)を出さないクリーンな電気自動車時代の幕が開いた。
アイ・ミーブの車体は、三菱自の軽自動車「i(アイ)」をベースにし、リチウムイオン電池を搭載して電気モーターを回して走る。ガソリン車はもちろんのこと、ガソリンエンジンと電気モーターを組み合わせて走行するハイブリッド車よりも環境対応で優れる。消費者の環境を守ろうとする意識が高まっているだけに、普及への期待は大きい。
性能は、充電1回当たりの走行距離が160キロ、最高時速は130キロで、家庭用コンセントで充電できる。三菱自によると、充電1回当たりの電気料金は深夜なら150円程度で済む。ハイブリッド車のガソリン代に比べても格安だ。
生産は、三菱自の主力工場である倉敷市の水島製作所だけで行われ、量産が始まっている。来夏までの1年間に2千台を計画し、2010年度は年間6千台、11年度は年間1万5千台以上に引き上げるとする。
試乗した本紙記者が「アクセルを踏むとモーターが小気味よい音で回転を始め、スーッと滑るように発進した」と体験記を紙面に載せていた。「アクセルを踏み込むと、モーター音が『キーン』と高音に変わり、即座にスピードアップ。加速の良さはガソリン車以上だ」など、快適さは予想を上回ったと記す。自動車の新たな地平が開かれたことを実感させる。郷土の水島から世界に誇る自動車が生み出されることは誇らしい。
車両価格は459万9千円と発表された。国の補助金を最大差し引くと約320万9千円になる。7月から市販され、主な顧客は当面、電力会社など法人と自治体で、来年度以降個人への販売が始まる。
電気自動車をめぐっては、富士重工業が7月下旬に法人向けに発売するほか、日産自動車も来年度から販売する。海外メーカーも参入の動きを強め、競争の激化は避けられない。
現在の電気自動車は、搭載するリチウムイオン電池が高価なことから、車両価格が高くなっている。各メーカーは勝ち抜くため、電池の改良など割高な価格引き下げに向けた技術開発にしのぎを削ることになろう。三菱自は環境対応車の先頭を走り続けてほしい。
2008年の合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの推定人数)は1・37で、前年を0・03上回ったことが厚生労働省の人口動態統計(概数)で分かった。
過去最低の1・26を記録した05年から3年続けて上昇したことになる。少子化対策が大きな課題になる中、わずかずつでも出生率が上向いてきたのは明るい話題である。
生まれた子どもの数は109万1150人で、前年より1332人増えた。08年はうるう年だった関係もあるが、赤ちゃんの笑顔が家庭や地域で少しでも多く見られるようになったのは喜ばしい。
ただ、高齢化の影響などで亡くなる人の方が多かった。出生数から死亡数を引いた人口の自然増減数はマイナス5万1317人だった。前年(マイナス1万8516人)を大幅に下回り、過去最大の自然減となった。少子高齢化が加速し、日本が人口減少社会に入ったことが一段と鮮明になった。
出生率が上向いているのは、晩婚化を背景に30代の出産が増え続けていることや、20代の出生率が下げ止まりつつあるのが理由とみられる。
政府はさまざまな少子化対策を講じてきた。仕事と家庭の両立支援や働き方の見直し、医療・保育環境の整備などだ。3年連続で出生率が上昇した要因を詳しく分析した上で、今後の対応に生かす必要がある。
最近は選挙向けの人気取りのような施策増加が目立つ。政府は08、09両年度の補正予算で妊婦健診の公費助成や子育て応援特別手当など打ち出した。
だが、いずれも短期の限定措置である。政策効果を疑問視する声は少なくない。次期衆院選では、こんな少子化対策の在り方も争点にすべきだろう。
(2009年6月6日掲載)