「おとっちゃんな、実は嫁さんがいたんじゃ。じゃがな、ダメダメなおとっちゃんは浮気をしてな。そのことを知った嫁さんは、自分も浮気しちょったんじゃ。おとっちゃん、それが許せのうてな。自分を棚にあげて、嫁さんに毎日暴力を浴びせとった。この裏切り者! ってな……」
(おとっちゃんがそんなこと……。うそ……)
アタシは黙って耳を傾けていた。おとっちゃんからこういう話を聞いたのは初めてだった。奥さんがいたことすら初耳だ。
「嫁さん、自殺してしもうた……。おとっちゃんが許さなかったばかりにの。許しとったら、今も生きとったかもしれん。おとっちゃんは自分を責め、後悔したんじゃ。心の狭い自分にの。いねくなって、初めて嫁さんの大切さに気づいたんじゃ……。おとっちゃんと同じ気持ち、さやかちゃんには味わってほしくねぇ」
「おとっちゃん……」
「死におってから許すことになるんじゃったら、今、許せ。さやかちゃんとひろみちゃんは心の友達、『心友』じゃろ」
「……うん」
おとっちゃんは突然、咳きこみ始めた。次から次へと止まることなく続く咳に、身体をまるめ苦しそうだった。
「大丈夫? おとっちゃん!」
アタシはどうすることもできず、おとっちゃんの背中を何度もさすった。
「すまんのう。さやかちゃん、この写真たて、直してからおとっちゃんに返しとくれ。お願いじゃ。さやかちゃんはさやかちゃん。ひろみちゃんはひろみちゃん。二人は心友。それは変わることじゃあねぇ。大丈夫だて」
おとっちゃんの咳は落ち着いてきた。
(ひろみはひろみか……。そういえば高校のとき、アタシが援交してるってウワサがたったとき、ひろみもしてるんじゃないかって言われて迷惑かけたっけ。ひろみは、そんなの大丈夫だよって、けろっとしてたけど、彼氏もいたし、つらかったはずだよな……。アタシのこと、一回も責めなかったっけな……)
ななみ :
2009年6月4日 at 9:50 PM
死んだら何にもならないもん泣