大阪府内を走っていた京阪本線の車内で先月21日、急性心筋梗塞(こうそく)で倒れ、一時心肺停止に陥った枚方市の会社員、門田昌弘さん(44)が乗客-駅員-看護師-救急隊員の迅速な「命のリレー」で一命を取り留め、6日午前、関西医大付属枚方病院を退院した。倒れてから救急隊到着までの10分前後の措置が奏功。担当した医師は「周囲の尽力がすべて。後遺症が皆無なのは奇跡」と評し、門田さんは「感謝の一言です」と喜びをかみしめた。
京阪電鉄によると、門田さんは午前7時20分ごろ、樟葉発淀屋橋行き準急に乗車中、寝屋川市駅の手前で突然意識を失った。乗客が車内の非常通報装置を押して介抱し、駅では乗客4人が門田さんをホームに運んだ。
副駅長の大西宏則さん(48)ら駅員4人が呼吸も脈もない状態の門田さんに心臓マッサージと人工呼吸を施し、自動体外式除細動器(AED)を操作。作動から1~2分後、近くにいた看護師が自己心拍の再開を確認。電車到着から5~10分後には寝屋川消防署の救急隊も駆けつけたという。
妻の早利子(さとこ)さん(42)が「死を覚悟した」という状態だったが、門田さんは翌22日夕方には意識を回復。2、3日の安静後リハビリを始め、院内の廊下を歩いて回復に努め、この日の退院にこぎ着けた。
担当の北澤康秀医師(56)は「即座に適切な処置がされ、病院内での連携も成功した。命を救いたいという気持ちの連鎖で救われたのだろう」と話す。
退院に際し門田さんは「倒れた時のことは全く覚えていない。周囲の迅速な対応で今、こうして元気でいられる」と笑顔で話した。【橘建吾】
毎日新聞 2009年6月6日 東京夕刊