2009年05月09日
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Q その後の経過を簡単に説明して下さい。
今年の1月23日に半袖下着が超低温保存してある自治医科大学に赴き、検察官推薦の鑑定人と弁護人推薦の鑑定人が裁判官3名の前で宣誓したのち、本件の鑑定についていくつかの質問を受け、半袖下着を二つに分けて、それぞれ持ち帰られました。
2人の鑑定人が鑑定資料を実際に見られた最初の機会ですが、お二人とも資料を見て難色を示されることはありませんでした。弁護側推薦の鑑定人にはその前にお目に掛かりお話しを聞いていましたが、精子は人間の細胞の中でももっとも強い細胞膜で守られた細胞で、保存状態の点からは問題はないと聞いていましたが、実際に資料を見てもらって、その不安が解消したように思いました。
ついで1月29日、千葉刑務所で主任裁判官立ち会いのもとで鑑定人の1人が菅家さんから血液と口腔粘膜を採取し、ここに2つの鑑定資料が揃いました。
鑑定は4月末を目途に鑑定書を提出して行うことになっていましたが、ほぼそのとおり順調に鑑定が行われたことになります。
Q 今回のような鑑定結果が提出されることになると、予想はしていましたか。
もちろん期待はしていましたが、不安もありました。何よりも、半袖下着の遺留精液は、最初は血液型鑑定に使われ、ついで本件のDNA鑑定で使われ、残っているとしてもわずかでした。しかも、既にお話ししたように、マイナス80℃で保存されるようになったのはわずか4年前のことで、14年間常温で保管されていたのです。量的にも少なく、質的にも劣化している可能性が高かったために、鑑定不能という鑑定結果になるのではないかというのが一番の心配でした。
また、警察は本件のDNA鑑定を行う前に菅家さんの精液が付着したティッシュペーパーを入手していましたので、DNA鑑定の知識に乏しい警察官によって2つの資料が同時に取り扱われ、菅家さんの精液が半袖下着に付いてしまっていれば、「一致」の鑑定も出かねないという一抹の不安もあったことも事実です。
しかし、今回の結果はそのような危惧が無用だったことを教えるもので、「真実は必ず明らかになる」と信じてきたことが現実のものとなったのです。DNA再鑑定をしてもらえれば,自分の無実は明らかになると言い続けた菅家さんの言葉は正しかったのです。
DNA鑑定書の交付が、昨日(5月8日)の午後でしたので、菅家さんにはまだ伝えていませんが、週明けの11日にも千葉刑務所で面会して伝えるつもりです。
Q 今回のDNA再鑑定の結果は、足利事件だけでなく、他の事件や刑事司法全体に影響を及ぼすのではないかと思いますが、佐藤弁護士はどう思われますか。
私たちの現在の課題は、菅家さんの1日も早い無罪で、他の事件ことや刑事司法全体のことはそのあとの問題です。しかし、DNA鑑定という最新の科学による鑑定結果が間違っていたことは、足利事件以外にも影響を及ぼすと思います。