厚労省分割、定額給付金……首相に「面従腹背」の与謝野氏
2009年6月4日 週刊文春
厚生労働省の分割問題で「最初からこだわっていない」と発言し、「また、ぶれた」と麻生太郎首相が集中砲火を浴びている。しかし、この問題を最初に提言したのは、五月十五日、有識者会議「安心社会実現会議」における渡邉恒雄・読売新聞グループ会長だ。首相は尻馬に乗って、持論があるかのように放言したにすぎない。それが、与謝野馨財務・金融・経済財政担当相が記者会見で「首相から指示があった」と明言したことで、「麻生主導」の印象を与えることになった。同会議の実態は、与謝野氏のブレーンを集めた「与謝野機関」。渡邉氏は最大の後見人で、分割案は与謝野氏と擦り合わせた上で持ち出した。首相には、与謝野氏が事前に根回ししてあったのは言うまでもない。だからこそ、麻生氏は「独自案」を得意げに吹聴できたのだ。
「ぶれた一番の責任は、党内をまとめる算段もないのに大風呂敷を広げた麻生首相にあるが、与謝野氏が自分の構想を実現しようと巧みに“首相指示”を演出したことも大きい」(全国紙政治部デスク)
思えば定額給付金について当初、首相が「もらうつもりはない」と語ると、「もらうとかもらわないという問題ではない」と発言。その後、麻生氏は前言を翻すことになった。かように、「ぶれる麻生」のイメージが定着した陰には、与謝野氏の言動が少なからず影響している。「足を引っ張ったとは言わないまでも、サッカーで巧みに相手選手のファールを誘うような立ち回り」(同前)が続いているのだ。
安倍晋三改造内閣で、与謝野氏を官房長官に推薦したのは麻生氏だ。福田康夫前首相の辞任後、後継を目指した麻生氏はいち早く与謝野氏に協力を要請。だが、与謝野氏が突然、自民党総裁選への立候補を表明すると、「本当か」と絶句した。麻生氏は与謝野氏を頼りにしているのに、与謝野氏の態度は「面従腹背」と見えなくもない。
与謝野氏が「あわよくば首相に」と政権を狙っているのは、今や政界の常識だ。「安心社会実現会議」も、「実態は与謝野政権準備委員会」(経済産業省幹部)とささやかれる。がん手術の予後検査を受ける身で、三閣僚の激務の傍ら、BS放送にレギュラー番組を持ち、自ら各党議員に出演を交渉しているのも、「衆院選後の政界再編をにらんで動いているから」(自民党閣僚経験者)。麻生降ろしは静かに始まっている。
※各媒体に掲載された記事を原文のまま掲載しています。
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