きょうのコラム「時鐘」 2009年6月5日

 新型インフルに「にらみ」と、見出しにあった。歌舞伎の市川海老蔵さんが大阪の公演で、独特の見えを切る「にらみ」を披露した。にらみを見ると1年間、風邪をひかないという

迫力ある海老蔵さんのにらみは、関西を大騒ぎに巻き込んだ軽挙妄動に対する懲らしめのようにも映る。引きこもってストレスをためるよりも、芝居に出掛ける方がよほど心にも体にも良い

にらみは、市川家のお家芸である。海老蔵さんも、父の團十郎さんも立派な目玉をお持ちである。小さな目玉では様になるまい。独特のにらみは、血筋が伝える世襲の芸でもある

細い目でも垂れ目でも務まるのが政治の世界だが、世襲制限論議がかまびすしい。すぐにやると言い、次の次の選挙からと言い直す。抜け道があるのはけしからんと批判したり、職業選択の自由に反すると言ってみたり。まるで騒ぎ立てることが仕事のようである

ほかにすることがたくさんあるだろうに。選挙前のアドバルーンなど、程なくしぼむ。インフルよりも、たちの悪い騒ぎではないか。海老蔵さんに、国会でもひとつにらんでもらおうか。