あの人は今こうしている　金萬福さん（お笑い系中華料理人として人気だった）

　テレビ東京のバラエティー番組「浅草橋ヤング洋品店」の“中華大戦争”は周富徳・富輝の周兄弟や譚彦彬、林彦憚ら個性豊かな中華料理人が毎週、ハチャメチャな企画でバトルを繰り広げていた。そんな中、“炎の料理人”と呼ばれ、愛嬌タップリの片言日本語でとりわけ人気があったのが金萬福さんだ。今どうしているのか。

●「今でもワタシのことをお笑い芸人と思っている人がいるね」

「どーもどーも、わざわざ来てもらって悪いねぇ」

　栃木県宇都宮市の中心地にある宇都宮東武ホテルグランデ２階の中華レストラン「竹園」を訪ねると、厨房から白いコック服の金さんが現れた。高いキーの声にドングリ眼が懐かしい。

「一昨年の１月からここの総料理長を任されててね。ほとんど毎日、キッチンに立ってる。名前を貸してるだけだと思った？　ハハハ、それはない。市内のマンションに引っ越したし、今じゃすっかり“宇都宮の金さん”だよ」

　金さん、餃子の街・宇都宮で本場仕込みの餃子を売り込もうっていうのか？

「ハハハ、赤坂でやってた『赤坂蓬莱倶楽部』をビルの建て替えで閉めることになってね。これからどうしようって考えてたとき、東武ホテルさんから声が掛かったの。８８年に日本に来て、山梨にいた約３年以外はずっと東京か横浜だったから、少し離れるのもいいかなと思ったわけ。でも、東京へは新幹線で４０分ちょっと。週に１回は打ち合わせとか遊びで出かけてる。エガちゃん（江頭２：５０）とは今も飲み友達ね」

　香港の名店「鳳凰酒楼」「好彩酒楼」などの料理長だった金さんは８８年に来日すると、新宿の「桂林」を皮切りに、甲府富士屋ホテル「桃華楼」、新横浜プリンスホテル「胡弓」、中目黒の「カオキン」、そして「赤坂蓬莱倶楽部」などの料理責任者を歴任。その一方でお笑い系中華料理人として人気を得た。

「今でもワタシのことをお笑い芸人と思ってる人がいるね。ウン、お笑いはもう卒業した。あと、料理番組も時間的に余裕があるときじゃないと引き受けない。料理ベタなタレントさんが出ると料理に失敗ばかりして、予定時間がオーバーするのはしょっちゅう。おかげで、こっちのスケジュールがめちゃくちゃになっちゃうのよ。それでも地元のスーパーやパチンコ店のイベント、変わったところだと大学の学園祭の料理コンテストの審査員なんて依頼もあって、けっこう忙しいよ」

　目下、取り組んでいるのは地産地消だとか。

「栃木は食材が豊富だから、季節ごとにメニューを考えるのが楽しいね。料理はレシピがわかっても、そう簡単にコピーできない。料理人の腕次第ってことで、このレストランに来れば栃木の食材を使った最高の中華料理を食べられる。ぜひ、みんなで来てよ」

　市内のマンションにひとり暮らしだ。

（日刊ゲンダイ2009年6月2日掲載）