女性政策
多様なライフスタイルを生きる時代の自立と安心の政策
〜男女共同参画政策の充実に向けて〜
2.自由な選択のための中立・簡素な税制
〜税金に、生き方選びの邪魔をされていませんか〜
ライフスタイルの選択に中立な税制にします
 個人の所得に係る税制は、原則として個人単位のものですが、家族に対してのさまざまな配慮が持ち込まれています。家族配慮は、納税負担の軽減を可能にしますが、一方で個人の自由なライフスタイルの妨げとなっていることを、ご存じでしょうか。
 家族配慮の例を挙げると、妻(または夫)が無収入の場合には、扶養者である夫(または妻)に対して配偶者控除や配偶者特別控除(扶養者の収入が1000万円以下が条件)が適用され、所得税額が低くなります。妻が働いて収入を得ている場合でも、年収入103万円までは給与所得控除65万、基礎控除38万円という控除のしくみで、本人所得に課税されないばかりか、夫も配偶者控除により税額が低くなります。また妻の収入が年141万円未満であれば、夫は配偶者特別控除を受けることができます。
 このように税負担が軽くなることは、一見ありがたいものと思われます(ひとくちメモ)が、この制度のためにパート女性の3割近くは就労や年収調整を行い、その7割は税制控除を考慮して働く結果となっています(厚生労働省「パートタイム労働者総合実態調査報告」2001年)。扶養配偶者世帯に厚い所得税制が、女性の自由なライフスタイルの選択を妨げ、働き方、生き方に影響を及ぼしていることは明らかです。
 では、子どもや高齢者の扶養控除はどうでしょうか。世帯内に扶養控除の該当者が多い場合であっても、被課税者本人の所得が課税最低限に達していなければ減税などのメリットはありません。
 高齢者が社会サービスなどを利用する場合に、世帯が課税か非課税かで負担を決められることもあります。税制や負担が個人単位となっていないために、高齢者の自立した生き方が妨げられているのです。

ひとくちメモ税負担はどのくらい軽減されるのでしょう

 内閣府の男女共同参画会議・影響調査専門調 査会の報告( 2002年 12 月)によれば、配偶者控除、配偶者特別控除による世帯の税額減少 について、その額は「退職後パート世帯」で生涯 で112万円、「退職後専業主婦世帯」で 369 万円、と試算されています。
 また、世帯生涯可処分所得額は、「継続勤務世 帯」「退職後パート世帯」「退職後専業主婦世帯」 でそれぞれ4億6883万円、3億 4128万 円、3億 963万円と報告されています。
 被扶養配偶者になることによる税額負担の減 少額に比べて可処分所得額の差の大きさにおどろきます。ライフスタイルの選択は、本来個人の自由ですが、配偶者に関する税制の控除による税額負担の減少に対して、あまりにも大きい所得格差を注目しないわけにはいきません。

私たちは次の政策を実現します
  • 個人所得税を性別役割分業に固定しない税制に変え、ライフスタイルの選択に中立な税制にします。

  • 子どもや女性についての税制を改革したのちに、 高齢者に関する税制を見直し、特定年齢層だけを 特別扱いしない税制を実現します。
控除から手当へ
 配偶者控除や配偶者特別控除は、女性が家事や 育児・介護のアンペイドワーク(支払われない労働)をする代償、という見方があります。しかし人 間の暮らしの再生産に不可欠な家事や育児・介護 は片働き世帯だけではなく共働き家庭でも担っているものであり、また小規模化した家族ではこれらの労働を家族で担うとしても担いきれるもので はありません。いわゆる専業主婦が育児や介護に 携わっている片働き世帯でも、子育ての不安は保育サービスを、過重な介護は介護サービスを必要 としています。それゆえ、アンペイドワークの見 地から配偶者控除や配偶者特別控除を肯定することは合理的と言えません。
 配偶者控除・配偶者特別控除が適用される所 得水準は、企業の家族手当支給の収入ラインと重 なっている場合が多く見られます。それゆえ配偶 者控除・配偶者特別控除の実施は、家族手当制度とあいまって、いっそう女性の多様な生き方・働き 方の選択を妨げる要因となっています。
 女性が自由に働き方や生き方を選べるように、 配偶者控除、配偶者特別控除を解消して、それによる税の増収分を歳出政策として手当の充実にあて、総体として生活の安定を図るほうが政策として有効です。(ひとくちメモ
 子どもの扶養控除も課税最低限以下の所得の家庭には減税などのメリットはないのですから、これを廃止して手当に切り替え、すべての子どもの暮らしの安定・充実に資するようにしたいものです。

ひとくちメモ子どものいない人は不利?

 配偶者控除、配偶者特別控除の解消による税の増収分で子ども政策を充実するとしても、子どものいない世帯には何の見返りもないと疑問 がもたれるかもしれません。けれども、子ども がいない人もやがては年金を受け取り、社会的介護を利用することになるわけですから、世代 間連帯の視点に立てば子ども政策充実の意味は大きいと言えます。

私たちは次の政策を実現します
  • 配偶者控除・配偶者特別控除を解消して、税の増 収分で子ども手当(児童手当)、子育て支援策を充実します。ただし制度転換による激変緩和のために、基礎控除の引き上げを検討します。
ひとくちメモ控除を廃止し、子ども手当を支給すれば


【片稼ぎで年間の給与収入が500万円、16歳未満の子ども2人の場合】
《現行の概算所得税額》
控除=基礎+配偶+扶養×2+給与所得控除+社会保険料控除(概算)
  =38+38+38×2+(500×0.2+54)+(500×0.1)=356
所得税額=(500−356)×0.05=7.2万円 ―(1)

《配偶者控除・扶養控除等を廃止し子ども手当を支給した場合》
控除=基礎+給与所得控除+社会保険料控除(概算)
  =38+(500×0.2+54)+(500×0.1)=242
所得税額=(195×0.05)+(63×0.1)=16.1万円 ―(2)

《子ども手当を子ども一人当たり月に2万6千円※支給すると》
(2.6×12×2)−((2)(1))=53.5万円
◎家計収入は年間53.5万円の増となります。

基礎:基礎控除
配偶:配偶者控除
(年収103万円の配偶者に適用される)
扶養:扶養控除
※課税分差し引き後
(単位:万円)

【配偶者の年収・子どもの数と負担の増減】
年収 16歳未満の
子どもの数
現行の
所得税額
控除廃止後
の税額
子ども
手当額
家計収入の
増減
無し
〜103万円
2人 7.2 16.1 62.4 +53.5
1人 9.1 16.1 31.2 +24.2
無し 12.3 16.1 0 −3.8
141万円
以上
2人 9.1 16.1 62.4 +55.4
1人 12.3 16.1 31.2 +27.4
無し 16.1 16.1 0 0
(単位:万円、配偶者年収500万円・子ども手当額2.6万円の場合)
注:2007年4月現在の税制をもとに試算
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