警察官の言葉で強く印象に残った一言がある。その警察官は20年以上前に起きた連続殺人事件の捜査員を担当した一人だった。今でも被害者の名前を覚えていて、私に「どんな悲惨な事件でも、時がたてば世間からどんどん忘れ去られていくことが悲しい」とポツリと言った。
新聞には速報性と記録性が求められる。でも入社1年目の私は、日々の出来事を追うだけで精いっぱいで、きちんと記録することができていない。だから警察官の言葉がまるで自分に向けられているようでどきっとした。
ある先輩記者が「新聞記者の役割の一つは、歴史の証人になり、どんな事があったかを後世に伝えること」と言っていた。
警察官の言葉は、記者の役割について改めて考えさせてくれた。忘れることなく、自戒にして取材を続けたい。【久保玲】
毎日新聞 2009年6月5日 地方版