「朝日ニュースター」で毎週一回、西部邁と「学問のすヽめ」という対談をやっている。これまで、福沢諭吉、マルクス、夏目漱石、トクヴィル、美空ひばり、ニーチェ、吉田茂、オルテガについて論じてきたが、西部は、
「サタカと対談するなんて」
と言われているらしい。あるいは逆に私も、
「ニシベと対談するなんて」
と言われているかもしれない。
本誌の読者の中には、佐藤優を登場させることに疑義を唱える人もいると聞く。私も本誌の「読んではいけない」で佐藤の『国家の罠』(新潮社)を取り上げ、“外務省のラスプーチン”と呼ばれた佐藤が守ったのは「国益」ではなく、「省益」なのではないかと指摘したことがあるが、省益と国益が一致するとの擬制において行動する官僚だった佐藤は、それだけに国家の恐ろしさを知っている。たとえば、自分は人権派ではなく国権派ながら、死刑は基本的に廃止すべきだと考えるという。死刑という剥き出しの暴力によって国民を抑えるような国家は弱い国家だと思うからである。そして、ヨーロッパ諸国が死刑を廃止したのは、国権の観点から見て、死刑によって国民を威嚇したりしない国家の方が、国民の信頼感を獲得し、結果として国家体制を強化するという認識があるからだと続ける(佐藤『テロリズムの罠』角川oneテーマ21)。
“危険な思想家”佐藤優の面目躍如だろう。山田宗睦が『危険な思想家』(光文社)を書いた時、たしか、名指しされた江藤淳は、思想はもともと危険なものであり、“安全な思想家”とはどういう存在だと開き直った。この江藤の反論には、やはり、真実が含まれている。
佐藤優も、国権派ならぬ人権派にとって“危険な”要素を含む思想家であり、人権派のヤワな部分を鍛える貴重な存在である。
残念ながら、私たち人権派は小林よしのりの暴走を抑止する有効な手を打てていないが、小林がいま一番苛立ち、恐れているのは佐藤であり、佐藤はあの手この手を使って小林を追いつめている。
まさに博覧強記で、あらゆることに通じている佐藤だが、それゆえに知識過剰な人間に弱い。私がほとんど関心のない柄谷行人にイカれているように見えるのはその一面だろう。
北村肇編集長のコラム「一筆不乱」を公開しています。
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