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【社会】

『警察、検察許せぬ』 釈放の菅家さん 語気強め捜査批判

2009年6月5日 07時10分

記者会見で唇をかみしめながら無念さを語る菅家利和さん=4日、千葉市中央区で

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 冤罪(えんざい)を背負わされた怒りに声を震わせた。栃木県足利市で女児が殺害された「足利事件」の逮捕から十七年半。菅家利和さん(62)に対する司法の遅すぎた答えは、再審開始が決定する前の異例の釈放だった。「絶対に許せない。自分の人生を返してほしい」。捜査と裁判への不信感をあらわにした菅家さんは「冤罪で苦しむ人たちを支援していきたい」と力を込めた。 

 刑務所を出て約一時間後、千葉市内のホテルで行われた記者会見。グレーのジャケットを着た菅家さんが弁護団とともに姿を見せると、会場から大きな拍手がわき起こった。

 メガネをかけ、短く刈った髪には白髪が目立つ。冒頭で「今日は本当にありがとうございます。釈放されたのは、支援してくれた方や弁護団のおかげです」と丁寧な口調で感謝の言葉を述べた。

 笑顔を交えながら話していた菅家さんの表情が変わったのは、警察や検察に対する感想を聞かれた時。「謝って済むとは思っていない」「間違ったでは済まない。自分の人生を返してほしい」。真犯人に対しても「絶対に許せません。時効を許してはならないと思う」と語気を強めた。

 菅家さんは、「足利事件」を含めて三件の幼女殺害事件で、虚偽の「自白」をした。その理由を「刑事たちの取り調べが厳しく、髪の毛を引っ張られたり、け飛ばされたりした。無理やり責められ、白状しろ、早くしゃべって楽になれと言われ、どうしようもなくなって自白してしまった」と明かした。「今後は冤罪で苦しんでいる人たちのために支援をしていきたい」と言う。

 逮捕後に父親は死亡し、母親も二年前の四月に亡くなった。菅家さんは「故郷ですから生まれた所に戻りたい。早く両親のお墓参りに行き、私は犯人ではないですよと伝え、安心してもらいたい」と話した。

 会見の途中、支援者からヒマワリの花束を受け取ると満面の笑みに。「カラオケが大好きで地元でのど自慢大会に出たことがある」と語った菅家さんは「刑務所でも大会に出たが二番でした」と話し、会場の笑いを誘った。

◆大きく手を振り 支援者に応える

 釈放された菅家さんを乗せたワンボックスカーが四日午後三時四十七分、千葉刑務所の正門から姿を現すと、待ち構えた支援者らが一斉に手を振り車に駆け寄った。後部座席から身を乗り出し、両手を大きく振って支援者に応える菅家さん。百人を超える報道陣が囲む中、菅家さんは満面の笑みで何度も何度も頭を下げながら、支援者の姿が見えなくなるまで手を振り続けた。

 出迎えた支援者の男性は、菅家さんを乗せた車を見送りながら「長かった。感無量です」と声を詰まらせた。

(東京新聞)

 

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