迷える男の進む道が、決まった。北京五輪で金メダルを獲得した後、プロ転向宣言をしてから約半年。米国、ブラジルへ武者修行を重ねた石井が選んだ舞台は、戦極だった。
東京・目黒区の目黒雅叙園で開かれた会見の冒頭では石井節を連発。結婚式などの会場としても有名なところだけに、「きょうは結婚会見にきていただき、ありがとうございます。結婚相手は日本人で、戦極という相手と結婚します!」。
昨年12月に渡米し、世界最大の総合格闘技団体UFCと独占交渉契約を結んだが、交渉は決裂。進路は未定のまま、トレーニングを続けていた。転機になったのは1月4日の戦極さいたま大会。リングに上がりファンにあいさつすると、来場していた朝青龍に対決を呼びかけるパフォーマンスをみせた。そのとき、日本でのデビューを熱望するファンの声援が、胸に響いた。
その朝青龍にも電話で相談。「家族に試合をみせて恩返しした方がいい」と助言も受け、日本で経験を積み、海外へ殴り込みをかける計画へ方針転換した。戦極と結んだ仮契約ではUFCを含む海外の団体から出場要請を受けた場合、参戦できる許可も取り付けた。
戦極からはVIP待遇を用意される。4日に東京・新宿のオープンスペースで開かれる石井との本契約は、イベントとしてファンに公開される。約5000人の来場を見込んでおり、都心のど真ん中でプロへの第一歩を踏み出す石井は「本当の結婚会見? 世界王者になり、米国で有名になってハリウッドスターになってからしたいね」と笑みを浮かべた。
戦極関係者によれば、デビュー戦の相手にはバルセロナ五輪78キロ級金メダルの吉田秀彦(39)ら強豪がリストアップされる。夢のメダリスト対決へ。石井の闘いが始まる。(江坂勇始)