国直轄公共事業費の地方負担金について、金子一義国土交通相は、出先機関の職員の退職手当と年金分の負担金を廃止することを表明した。国の職員の人件費まで含めている負担金に対する地方からの批判に、国交省が応じる姿勢を示したことは認められるが、中身は不十分と言わざるを得ない。
国交省の集計では、2008年度に都道府県と政令指定都市が支出した負担金の総額は9712億円に上った。このうち職員の人件費は575億円で、うち退職手当は32億円、年金は89億円だった。麻生渡全国知事会長は「われわれが指摘した問題の一部だ」として、廃止項目の拡大を求める考えを示した。当然といえよう。
国直轄事業負担金は、国道や一級河川、港湾の整備など国直轄の公共事業の一部を、都道府県と政令指定都市が受益者として負担する。負担割合は法律で定められ、道路の場合は新設・改良費用の3分の1、維持管理費の45%が原則となっている。
もともと国からの請求には明細がなかったが、香川県で出先機関の庁舎移転費や職員給与などが含まれていたことが明るみになったことをきっかけに、不透明な使途について地方から不満が噴出した。
国交省は4月末、地方負担金の内訳を初めて盛り込んだ09年度の負担要請額を各自治体に通知した。さらに、5月末には08年度の負担金の内訳を示した。使途の透明化を求める全国知事会の要望に応えたものだが、多額の庁舎整備費や人件費などが含まれていることに、かえって反発が強まっている。
金子国交相の表明は、特に批判の強い退職手当などの廃止に限定したもので、維持管理費の廃止を求める全国知事会や政府の地方分権改革推進委員会の訴えは置き去りにされたままだ。負担金の使途をさらに詳しく示したうえで、一段の見直しが必要なことは言うまでもない。
地方負担金をめぐる問題を契機に、国と地方の役割分担や責任の所在などについて議論が高まっている。負担金制度が国の無駄な支出につながっているという指摘もある。単に国と地方、どちらが負担するかといった問題にはとどまるまい。
国の事業の受益の範囲がどこまでか、それに応じた負担として適正なのか、大いに議論すべきだろう。さらに、国と地方が対等な関係を築き、地方のことは、地方が責任をもって取り組むことができる分権改革へ論議を深めていきたい。
改正薬事法が今月から施行され、大衆薬(一般用医薬品)の販売方法が大きく変わった。コンビニエンスストアやスーパーでも販売できる一方、インターネットでの通信販売は原則禁止となった。
副作用リスクのある医薬品は安全性確保のため対面販売が原則となった。大衆薬はリスクに応じて3分類され、注意が必要な第1類は店内で客が直接手に取れない場所に置き、薬剤師が使用上の注意を説明する。
大半の風邪薬や解熱鎮痛剤が含まれる第2類は、薬剤師か都道府県が認可する登録販売者を置けばコンビニなどでも販売できる。説明は努力義務となった。薬が深夜でも買え、店同士の競争で価格が下がる効果も期待できよう。
一方、通信販売ではビタミン剤などリスクの低い第3類の製品しか扱えなくなった。薬剤師や薬害被害者の団体などから規制の要望が強かったためだ。効き目の強い薬でも簡単に買えたり、違法ドラッグの販売サイトが存在するなどネットに問題があるのも確かだ。
しかし、薬局のない過疎地や出歩くのが不自由な障害者が薬を買えなくなるのも困る。ネット業者らの反発が大きかったため、厚生労働省は離島の住民や同じ店から継続購入しているケースでは、2年間は通販での購入を経過措置として認めた。
ただし、これは抜本的な解決策ではない。離島だけでなく、過疎の進む山間部でも薬局不足は深刻である。改正法が成立したのは2006年だ。本来、こうした問題はもっと議論しておくべきだった。
薬は使用法を誤ると命にかかわる。優先されるのが安全性であるのは当然だが、利便性とも両立する販売方法を探る努力も関係者に求めたい。
(2009年6月4日掲載)