おくすり最前線

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〔改正薬事法の背景と経緯〕

●驚くことに薬事法制定(S35)以来、医薬品の販売に関する法律は皆無だった
 
現行の改正薬事法は、昭和35年に制定されました。この内容をみると、調剤を行う薬局の開設・設備・提供方法などは詳しくルール化されていました。しかし、大衆薬を販売する一般販売業、薬種商販売業、配置販売業、特例販売業などの販売業に関するルールは、開設許可に関するルールはあったものの、販売に関するルールはほとんど存在していませんでした
 
 
 
 
    大衆薬も医薬品です。安全ではありません
大衆薬(一般用医薬品)による重篤な事故や被害は、年間300件ほど厚生労働省に報告されていますが、軽度なものや体質や依存性によるもの、これに因果関係の不明なもの、体質や報告のないものなどを加えると、軽く10万件を越えると言われています。 
「大衆薬は安全」、「漢方薬は安全」と考えられる方も多いと思いますが、これまで安全とされていた大衆薬で、サリドマイド被害や、スモン(キノホルム)被害、そして今日に至ってはステロイド剤によるムーンフェイス症状スチーブンジョンソン症候群SJS)など多くの取り返しのつかない薬害が起こっているのも事実です。

特にSJSについては、いつも使っている医薬品であっても、突然に副作用があらわれ、処置が遅れると一生不自由な生活を強いられることになります。

大衆薬と言えども、副作用の症状に関しては一刻も早い原因の解明と、適切な処置が必要なのです。
 
 
参考リンク:SJS患者会   (http://www.sjs-group.org/
※リンク先の新しいウィンドウが開きます。
 
 
 ●厚労省は、何度となく医薬品の販売に関する方法を通知で出してました
 

こうした状況に対し、これまで厚生労働省はたびたび、都道府県薬務課および地区保健所に、大衆薬の安全な提供(販売および授与)に関する通知を出してきました。

この通知に基づき、都道府県薬務課および地区保健所は、管轄するエリアにおける販売業の取締りや監視指導に力を入れてきました。
 
通知に基づく行政指導には、法律に基づく通知・指導と、法律に基づかない通知・指導との2種類があります。
前者の法律に基づく通知・指導は強制力があり、守らなければ行政処分などの罰則の対象となります。
これに対して後者の法律に基づかない通知・指導は、必要に応じて行うことは良いのですが強制力はなく、それを実行するか否かは、指導される側の自由となっています。
                                                                                                    (行政手続法32条第1項および第2項)
 
 
 
●行政手続法により、法律に基づかない通知・指導は強制力がない
 
これはそもそも、許可を取扱う行政があまりにも勝手な法解釈と理由で、許認可を受けている者を取締り、法的な背景に乏しいにもかかわらず行政処分などの罰則を与えて来たことに由来します。こうした状況に対し、平成5年に総務省に「行政手続法」が設置され、こうした行き過ぎの行政指導を厳しく監視することになったのです。(各都道府県でもこれに基づいた条例を設け実施されています)

その結果、法律に基づかない通知・指導には強制力が伴わなくなったのです。

 

したがって、薬事法および省令などの法律に基づかない(無かった)大衆薬の販売についての数々の通知や指導には、その内容が必要かつ重要だとしても強制力がなく、その指導に従って行うか否かは、受け手である販売事業者の自由なのでした。

 

 ●「やった者勝ち」の医薬品販売の実態に、国民の安全を求める声が高まる

周知のとおり、わが国の国民は生活の安心・安全を世界一求める国民であると言われています。

当然国民には、生活全般にわたって「安心・安全」を求める権利があります。特に近年は、様々な有害物質が含まれた食品問題偽装問題製品事故などが話題になり、きわめてデリケートな社会問題になってきています。

大衆薬においても、これまで何も販売ルールが無かったことが不思議です。これまでの良し悪しは別として、行政手続法以前は圧倒的な力を持つ行政の通知、指導で調整されてきた大衆薬の販売でしたが、現在は行政手続法が施行され、その強制力と指導力が失われました。そのため、近年の医薬品の販売については「やった者勝ち」「何でもOK」「責任はない」の状況でした。

 

こうした大衆薬の販売状況に対して、多くの国民より「安心・安全」のための制度整備を求める声が日に日に高まってきたのです。