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4月28日夜、トッパンホールに「佐藤文雄と愉快な歌姫(なかま)たち〜歌とピアノのコンサート」を聴きに行った。このコンサートは、前の週に東京音楽大学の卒業演奏会を聴きに行ったときに、ホールの演奏予定で知っている人が出演することを知り、内容も良さそうだったので急遽、聴きに行くことにしました。 企画制作はカトリック多摩教会主任司祭のの晴佐久昌英神父さまが担当し、今回で4回目の開催となる。 今回のテーマは「祈り」。 冒頭に晴佐久神父さまの挨拶と、昨年の秋葉原の事件で急逝した東京藝大音楽学部の女子学生を追悼する、自作の詩の朗読があった。 出演者とそのプロフィールをごく簡略して記すと、 佐藤文雄(ピアノ): 東京都出身。武蔵野音楽大学卒業。2001年2月保谷こもれびホールにて「ジョイントソロリサイタル」に出演。2007年6月フィリアホールにて「ソロデビューリサイタル」を開催。 「佐藤文雄と愉快な歌姫(なかま)たち」への出演は今回で4回目となる、ほかアンサンブルなど多彩な演奏活動を行う。 現在、主にソロ演奏活動の他に、声楽をメインとした、アンサンブルピアニストとして活躍している。 宇佐美悠里(ソプラノ): 茨城県出身。今春、武蔵野音楽大学卒業。卒業演奏会に出演。現在、同大学院修士課程1年在学中。ザルツブルグ夏期国際音楽アカデミー2007マスタークラス修了。第62回全日本学生音楽コンクール東京大会入選。 私は今春の卒業演奏会で彼女の演奏を聴いた。 肥沼諒子(ソプラノ): 埼玉県出身。武蔵野音楽大学卒業。同大学院修了。平成16~19年度福井直秋記念奨学生。 これまでいくつかのオペラに出演し研鑽を積む他、ドイツ歌曲の研究・演奏にも意欲的に取り組んでいる。 澤江衣里(ソプラノ): 島根県出身。2005年国立音楽大学声楽科首席卒業、武岡賞受賞。その後、東京藝術大学大学院修士課程を修了。現在、同大学院博士課程に在籍、英米歌曲を柱として研究している。 また、バッハ・コレギウム・ジャパンや小澤征爾音楽塾オペラ・プロジェクトなどに参加している。「佐藤文雄と愉快な歌姫(なかま)たち」への出演は今回で3回目になる。 私は澤江さんの演奏は卒業演奏会とその年の読売新人演奏会で聴いたことがある。 山本耕平(テノール・クラリネット): 鳥取県出身。東京学芸大学教育学部中等教員養成課程音楽科クラリネット専修を経て東京藝術大学声楽科に入学し、2008年首席卒業後、同大学大学院に進学し、現在、二年次オペラ専攻に在学中。第39回イタリア声楽コンコルソ・ミラノ大賞。10月よりミラノに留学予定。 私は昨年の読売新人演奏会で山本君の頭抜けた演奏を聴いて驚いた。その後、文京シビック合唱団の定期演奏会のソリストでもその抜群の演奏を聴いた。 プログラムは、 *ドビュッシー:「月の光」 =佐藤文雄(ピアノ) *ジョルダーニ:「いとしい女よ」 *マスカーニ:「アヴェマリア」 =山本耕平(テノール)佐藤文雄(ピアノ) *中田喜直:「たんぽぽ」「さくら横丁」「行く春」 =澤江衣里(ソプラノ) 佐藤文雄(ピアノ) *三善晃:「抒情小曲集」1.ほほずき 2.少女よ 3.雨の降る日 4.小曲 5.五月 =宇佐美悠里(ソプラノ) 佐藤文雄(ピアノ) *R.シュトラウス:「献呈」「万霊節」 =山本耕平(テノール)佐藤文雄(ピアノ) *オッフェンバック:歌劇「ホフマン物語よりオランピアのアリア「人形の歌」 =肥沼諒子(ソプラノ) 佐藤文雄(ピアノ) *シューベルト:「鱒」「野薔薇」 =澤江衣里(ソプラノ) 佐藤文雄(ピアノ) *シューベルト:「岩の上の羊飼い」 =澤江衣里(ソプラノ) 山本耕平(クラリネット)佐藤文雄(ピアノ) (休憩) *モーツアルト:「すみれ」「鳥よ、年ごとに」「クローエに」 =宇佐美悠里(ソプラノ) 佐藤文雄(ピアノ) *ドニゼッテイ:歌劇「ランメルモールのルチア」より エドガルドとルチアの二重唱「ルチア許してもらいたい」「裏切られた父の眠る墓で」 =肥沼諒子(ソプラノ) 山本耕平(テノール)佐藤文雄(ピアノ) *ショパン:バラード第4番(原曲) =佐藤文雄(ピアノ) *プーランク:「愛の小径」 =澤江衣里(ソプラノ) 佐藤文雄(ピアノ) *ドニゼッテイ:歌劇「ランメルモールのルチア」より エドガルドのアリア「祖先の墓に別れを告げよう」 =山本耕平(テノール)佐藤文雄(ピアノ) *R. シュトラウス:歌劇「ナクソス島のアリアドネ」より ツェルビネッタのアリア「偉大なる王女様」 =肥沼諒子(ソプラノ) 佐藤文雄(ピアノ) *アンコール:「アメージンググレース」 =全員 感想としては、 出演者は、現在、一人前の音楽家を目指し研鑽を重ねている若手の人たちばかり。 音楽界に実力を認められるのがすぐ手の届くところにいる人、多少荒削りながら将来に大きな可能性を感じさせる人など様々だが、音楽を愛し聴衆にその喜びを伝えたいという思いが全員から伝わってきた。 肥沼諒子(ソプラノ)さんは今回初めて聴いたが、このまま研鑽を重ねれば、近い将来きっとメジャーとなるのも夢ではない、と思った。エンターテナー性も充分にお持ちと観た。 特にオッフェンバックのコミカルな「人形の歌」に挑戦して歌いきったのは素晴らしい。 澤江衣里(ソプラノ)さんは、国立音大を卒業時以来、久々に歌声を聴いたが、包み込むような暖かい声質で、着実に声楽家への道を歩んでいると思った。 特にシューベルトの「岩の上の羊飼い」は素晴らしかった。 山本耕平 (テノール・クラリネット) 君は元々クラリネット専攻であったので、クラリネットもとても素晴らしい演奏だった。もちろん、テノールは小柄な体ながら相変わらず抜群の演奏をした。 宇佐美悠里(ソプラノ)さんは、今春、音大を卒業したばかりだが、今回のような大舞台はとても良い経験になったことでしょう。十分な事前準備をし、精一杯の演奏をしたと思う。若い人は日ごとに大きくなっていくので楽しみだ。 佐藤文雄(ピアノ)君はアンサンブルで活躍しているとのことで、無難に弾きこなしていた。もっと上のクラス(大学院や海外留学)で勉強して地力を付けてより良い音楽家になってほしいものだ。(本人もそう希望している。)将来性は大いに期待できる。 二人の日本人の作曲家の作品の演奏もあったが、曲の性格は当然ながら文化の違いがあるので、ヨーロッパの曲とは全く異にする。今日のこの作品の演奏の出来について言えばいまひとつの感が否めない。日本の音楽大学の教育は、近年は主にヨーロッパの作品が主になっているが、最近は日本の作品も見直され大学の教育にも採り入れられるようになってきている。 少し余談で恐縮だが、声楽家(ソプラノ)の唐澤まゆこさんはパリ在住でフランス歌曲を得意とされているが、日本の歌曲も歌いこなしていて素晴らしい。 ともかく、今宵は盛りだくさんの演目で楽しませてくれた。至福のひとときを有難う。 |
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