初期のネットワークオーディオは“音が悪い・時間がかかる・使いづらい”というイメージだった
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取材は山之内氏自宅の試聴室で行った |
私個人としては、これまでにもソニーのネットワークウォークマンなど初期段階から様々なネットワークオーディオ製品、サービスにチャレンジしてきました。その時に感じたのは、音質が良くない、ダウンロードに時間がかかるという欠点。そして何より嫌だったのが使いづらさでした。ファイルコピーの制約なども複雑で、仕事では機器に触れることもありながら、自分では使いたくないと、これらの製品とは距離を置くようになっていました。
ところが4年前頃から、ネットワークオーディオにも新たな動きがでてきました。05年、オンキヨーがPC向け音楽配信サービスe-onkyo music【詳細はこちら】を開設し、ロスレス、96kHz/24bitの楽曲配信を始めたのです。これには興味があったので、自分でも使ってみたし、PCとオーディオ機器はどのように繋ぐのがふさわしいのかなどいろいろと試してみました。
でもそこで気にかかったのは、音質よりも使い勝手の問題でした。e-onkyo musicでダウンロードした楽曲はPC内のWindows Media Playerで再生するのですが、これがあまり使い勝手が良くないのです。何よりオーディオを聴くのにわざわざPCを立ち上げて、キーボードに向かって操作をしなければいけないという手間が煩わしかった。
またPCはノイズだけでなく、警告音などの予期しない音が発生することがあります。PCでのオーディオ再生は適さないと感じ、やはり自分の趣味として追求するには至りませんでした。それでも配信初期と比べれば音質のクオリティも向上しましたし、ステップアップしたなという感触はありました。
これまでのネットワークリスニングと全く次元の違うサウンド
〜LINN DSとの衝撃的な出会い〜
そんな中、07年末にリンからネットワークミュージックプレーヤー「DSシリーズ」が登場したのです。DSで大きく変わったことは、まずデジタル伝送であること。イーサネット端子を使ってネットワーク経由でHDD内のデータを再生する専用プレーヤーという新たな方向性を備えていました。UPnP(ユニバーサルプラグ&プレイ)規格をオーディオシステムとして本格的に導入したのはこのDSが初めてです。
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KLIMAX DS ¥2,940,000(税込)
>>製品データベース
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AKURATE DS ¥892,500(税込)
>>製品データベース
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MAJIK DS ¥451,500(税込)
>>製品データベース
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SNEAKY MUSIC DS ¥294,000(税込)
>>製品データベース |
DSは全部で4モデルをラインナップ。最上位「KLIMAX DS」、「AKURATE DS」はXLRアナログ出力を装備。「MAJIK DS」「SNEAKY MUSIC DS」は光・同軸のデジタル出力を装備する。またシリーズの中で「SNEAKY MUSIC DS」のみアンプ内蔵型で、本機にスピーカーを直接接続できる |
実際に試聴してみると、これまで聴いてきたネットワークオーディオ機器とは全く次元が違っていて、いきなりハイエンドオーディオの領域の音が出てきました。見通しがよく、演奏者が立つステージに近づいたような感覚の音がそこにありました。
この高音質の理由を知りたくなって、メーカーの方にも詳しく話をうかがったところ、CD再生の場合も、DSでは吟味して採用したリッピングソフトと信頼性の高いドライブを組み合わせることで、音楽ファイルをデータとして再生するため、リアルタイム再生を行うPCが克服できないノイズや劣化をキャンセルし、より忠実にCDの音楽データを再現することができるという説明でした。実際PCの光学ドライブはピンからキリまであり、音質対策が全く施されていないものもたくさんあります。
リッピングソフトの音の違いがどこにあるのかなどいろいろ気になったので、自宅でKLIMAX、MAJIK、AKURATEなど数種類のDSシリーズを、普段から使用しているリッピングソフトを使って聴き比べてみました。するとどのプレーヤーも、当時使っていたハイエンドCDプレーヤーの音を軽く越える音を再現したのです。この体験がきっかけでDSシリーズの魅力を探究するようになったのです。
CDより高音質なマスター音源を配信するリンレコード
またDSを聴いていくうちに、CDだけでなくリンレコード(LINN RECORDS)【詳細はこちら】で配信されているマスター音源(リンではスタジオマスターと呼んでいる)にも興味を持つようになりました。ダウンロードして聴いてみるとCDよりも一段とクオリティの高い音で、「これは本物だな」と思いました。
iPod Touchで簡単操作。使い勝手も大きなポイント
プレーヤーとしての優れた操作性にも惹かれました。近年カーオーディオの分野ではホームオーディオに比べてメディアの自由度が高くなり、快適に車内で音楽を楽しめるようになってきました。聴きたい曲をすぐ取り出せて、曲順も関係ないという、あの制限のない操作環境は理想であり、早くホームオーディオでもこのようなシステムが採用されてほしいと感じています。
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DSに付属するPC用のコントローラーソフト「Linn Gui」の画面(日本語表示にも対応)。再生したい曲をプレイリストに追加して、DS本体やリモコンで操作できる。対応OSはWindows XP、Vista。
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写真はDS専用のコントローラーソフトPlug Playerの表示画面。「Linn Gui」を使わずにiPod touch、iPhoneでDSを操作できる。音楽を聴くためにわざわざPCを起動させるのは嫌という人も安心だ |
DSは当初、PCの画面でこの自由な操作環境を実現していて、アルバムのリスト、アーティストのリスト、ジャンル別のリストといった中から曲を呼び出すことができました。ただ私は音楽を聴く時にPCを触りたくない、という思いがあったので、PCの操作には何となくなじめずにいました。でもiPod TouchでDSを操作できるコントローラーソフトが開発されたということを知って、この長年ネットワークリスニングにおいてひっかかっていた使い勝手という問題も解消されたわけです。これら検証の成果が得られたことで、私自身もいよいよ08年の秋に「KLIMAX DS」の購入を決意しました。 |