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Microsoftのオンラインサービスはなぜこうもチグハグなのか




 Microsoft My Phoneの日本語β版の提供が始まった。Windows Mobile搭載のスマートフォンのデータをオン・ジ・エアでバックアップできる無償のサービスだ。実際の使い勝手は普通だが、ユーザーニーズに応え切れていない中途半端な印象をぬぐえない。

●スマートフォンユーザーを救うには力が足りないMy Phone

 My Phoneは、Windows Mobile 6以上を搭載したスマートフォンにインストールすることで、端末に保存されている連絡先、予定表、写真、ドキュメント、仕事、音楽などのファイルを最大200MBまでバックアップするサービスだ。バックアップはオン・ジ・エアで行なわれ、デフォルトでは、毎日1回、23:00から5:00の間に自動的に同期される。バックアップされたデータには、PCを使ってWebサイトからアクセスでき、PCでデータを更新すれば端末側にそれが反映される。このサービスは、それ以上のものでもなければそれ以下のものでもない。

 Windows Mobile搭載スマートフォンでは、さまざまなメールサービスを利用できるが、それらのメールをMy Phoneは関知しない。メールはWindows LiveのHotmailを利用しろということなのだろう。HotmailにWindows Mobileからアクセスすれば、Windows Liveアカウントを使ってのメールのやりとりができる。メールのデータはサービス側に保存されるのでバックアップする必要はない。でも、オフラインのときにはメールを参照することはできない。ただし、PCにWindows Liveメールクライアントをインストールすればメールを同期でき、オフラインでも過去のメールを参照できる。

 Windows Liveには、カレンダー、つまり予定表の機能も用意されている。ただし、これは、Windows Mobileの予定表とは連動しない。PCでLiveカレンダーを使うには、Windows Liveメールクライアントを使うか、Web経由での利用となる。Liveメールクライアントからなら、オンライン/オフラインにかかわらず予定を参照することができる。

 PCとスマートフォンで個人情報を共有するためには、Microsoft OfficeのアプリケーションであるOutlookを使う方法もある(XPまで使われていたOutlook Expressではない)。こちらは、PCでActive Syncを使うことでスマートフォンとデータを同期することができる。あるいは、Liveで提供されているOutlook Connectorを使えば、Liveメールやカレンダーのサービスと同期できるので、スマートフォン側からそれを参照できる。

 Outlook Connectorは、きちんと動けばかなり便利なはずだが、手元の環境では未だにきちんと動いてくれない。どうしてこんな不具合を数年にわたって直せないのか理解に苦しむ。それに、メモや仕事を同期できないのも不便だ。

●Microsoftの魅力的な企業向けSaaS

 一方、4月末からは、Microsoft Online Serviceの正式サービスが提供開始されている。こちらは、Exchange OnlineやSharePoint Onlineなど、Microsoftの各種サーバーソリューションをSaaSとして提供するもので、現在は無償のトライアルを利用することができる。

 Exchangeは企業向けのコミュニケーション支援を実現するもので、電子メール、予定表の共有といった機能を利用できる。Microsoft Online Serviceそのものも、企業を対象としたもので、1ユーザーあたり月額1,044円の有償サービスだが、最低でも5ユーザーからしか契約することはできないため、個人が強引に利用しようとすると、その5倍のコストが必要だ。

 トライアルを試してみたが、さすがにこれはきちんと動く。素晴らしい。自分専用のExchange Serverをホストしてもらい、インターネット経由で、いつでもどこからでもアクセスでき、PCからはOutlookを使ってデータを完全に同期できる。もちろん、スマートフォンやiPhone、iPod touchからも同期できる。Macでだって同期できる。

 つまり、Exchangeがあれば、複数台のPC、Mac、スマートフォン、すべてで個人情報を同期できる。設定を済ませてしばらく放置しておけば、それだけで、まるでずっと使っていたかのように自分専用の端末になっているわけだ。この使い勝手を知ると、Windows Mobileのスマートフォンは、なんて便利なのだろうと実感できる。新しいPCを使い始めるときも同様だ。

 Exchange Onlineでは、データはMicrosoftが預かり、そのデータをPCや端末に同期する形になるので、バックアップする必要もない。スマートフォンのユーザーでなくても、PCでOutlookを使うだけのユーザーでも、あるいは、ネットブックとメインPCの間で個人情報を同期したいといったユーザーにも便利なサービスだ。

 月に5,000円を超える出費は、かなり高額な印象を受けるが、家族3〜4名でという使い方をするなら、それなりにリーズナブルになる。こうした真っ当でオーソドックスなサービスこそ、個人向けに1ユーザーから利用できるようにしてほしいものだ。

●個人ユーザーをもっと大事にしてほしい

 多彩な選択肢の中から、もっとも自分に適したものをチョイスできる。その点では、現行のMicrosoftの数々のオンラインサービスは充実しているように見える。でも、逆の見方をすれば、そのどれもが中途半端で、ワンストップですべてのニーズを満たせるようなサービスが存在しない。共通点はLive IDがキーとなっている点だけだ。

 Exchange Onlineは最大公約数的な存在だが、対象が企業ということで、多くの個人ユーザーのアンテナからははずれてしまっている。もちろん、コストの点でもハードルが高い。

 Windows Liveはサービスが百花繚乱で、1つずつを詳細に見ていけば魅力的なものも多い。個人を対象としていることから、派手さがあって勢いも感じる。だが、PCとうまく連動し、サービス相互の連携がうまくいっているかというと決してそうなっていない。おかげで、個人ユーザーは、技術的には今夜からでも実現できる豊かなデジタルライフを得られないという結果になってしまっている。

 Microsoftは「ソフトウェア+サービス」をスローガンに、ローカルのアプリケーションと、オンラインのサービスをうまく連動させて、豊かなデジタルライフを実現しようとしているのだが、左右の車輪のホイール径が微妙に異なっているのか、一向に上手く進んでいかない。

 Windows 7以降は、進化の早い部分をサービスに任せ、基本的な部分だけをOSとしてきちんと提供することを目指しているらしい。つまり、Liveサービスは、これまでOSに含まれていた機能の一部を引き継ぎ、クラウドの急峻な進化スピードに足並みをそろえていくことになる。Windows 7から、メールやカレンダー、フォトギャラリーといったアプリケーションが省略されるようになったのには、こうした背景がある。

 それだけにLiveが担う責任は重大だ。でも、その責任を負えるだけのポテンシャルがLiveにあるのかといえば、ちょっと不安を感じたりもするのだ。

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