鼠先輩さん、青春のすべてがここにある…岡山県赤磐市

　デビュー曲「六本木～ＧＩＲＯＰＰＯＮ～」がいきなりの大ヒットとなった岡山県赤磐市出身の歌手・鼠先輩さん（３６）が、１８歳まで過ごした故郷に感謝の気持ちを明かした。岡山時代は団地で極貧生活を送り、交際を反対されていた現夫人とは、人目を忍んで公園でデートを重ねたエピソードも披露。３０代での遅咲きに「やっと、当時の友達やお世話になった店に行けるようになった」と、笑顔をのぞかせた。

　中２でギター、好きだったブルーハーツ

　生まれは大阪ですが、３歳の時に岡山へ移りました。住んでいたのは山陽団地というところ。家は貧乏でオヤジも働いていなかったから、ザリガニやアリを食べていました。テレビもオヤジがどこからか拾ってきた白黒。友達から当時はやったファミコンを借りて、マリオブラザーズで遊びましたけど、どっちがマリオかルイージか分かりませんでした。サンタクロースからプレゼントをもらったこともない。小学６年の時、枕元に置いた靴下には「ごめんなさい」という手紙が入っていた。大人の世界を早々と知ってしまいましたよ（笑い）。

　音楽は中学から始めました。当時はバンドブームで、好きだったのがブルーハーツ。ギターが欲しくて、中学２年からペンキ屋でアルバイトをして、レスポールモデルを買いました。アンプと合わせて４万円くらい。高校１年でＮＨＫのコンテスト（ＢＳヤングバトル）に出たり、音楽をやっている時が一番楽しかった。１８歳まで過ごしましたけど、青春のすべてが岡山にありますね。

　嫁さんとも１６歳の時に岡山で知り合いました。ある豪邸の娘で、そこで庭仕事のアルバイトをしていた僕が一目ぼれしました。メチャクチャこっそり会っていましたよ。当時はバンドをやっていたから髪の毛は赤かったし。２年くらい付き合いましたけど、夜の公園で彼女から「東京に行く」と言われて。とっさに「３０歳の８月１日に東京タワーで待っている」と、約束したんです。音楽が好きで本当に成功したいと思っていた。彼女が好きな半分、自分が成功してから、という気持ちが半分でしたから。
３０歳奇跡の再会　その後は３、４年ほど米国やメキシコ、ネパールとか海外を放浪して、２５歳から東京に住み始めました。３０歳になった時も僕はプー太郎で、それでも約束は覚えていたから、東京タワーに向かったんです。２時間くらい待っていると、彼女が来ました。告白して、その時はフラれましたけど、何度かアプローチして、またお付き合いできるようになった。５年前に結婚して、今は子供もいます。

　約束した場所？　もう忘れました。ベンチも何もなくて、ロマンチックな公園ではなかった（笑い）。でも、山陽団地の（山陽）６丁目にある「ＡＢＣ公園」はよく覚えています。鉄棒がアルファベットでＡＢＣの形をしていた。そこでは２人でよくしゃべったりしていましたね。後は僕の家で映画を見るとか。でも、まさか結婚するとは思わなかった（笑い）。

　デビューして、やっと会いたい人に会えるようになりました。やんちゃだったから顔向けできないこともあったので。昔は岡山が嫌いで、僕の目指すところは岡山で認められないと思っていた。最近やっと好きになりました。どんな仕事をしていても、帰るところは岡山。いまだに友達もいるし、故郷があって良かったと思いますよ。将来は県知事に立候補してみようかな。もっと元気でいい町、いい県にしたいと思っていますから。

　◆鼠先輩（ねずみせんぱい）１９７３年４月５日、大阪府堺市生まれ。３６歳。本名非公開。３歳から岡山県赤磐市（旧赤磐郡山陽町）に移る。山陽西小、高陽中を経て、県立備作高（現・和気閑谷高）中退。２００８年６月のメジャーデビューシングル「六本木～ＧＩＲＯＰＰＯＮ～」が、いきなりオリコンチャート歌謡・演歌部門１位を獲得した。パンクバンド「ＴＨＥ　ＳＵＰＥＲ　ＲＡＴＳ」を結成し、８日に配信限定シングル「ＰＰＰ－Ｐｕｎｃｈ　Ｐｅｒｍａ　Ｐｕｎｋ－」でデビュー。

　◆岡山県赤磐市　岡山県中南部に位置し、２００５年３月に赤磐郡内の山陽町、赤坂町、熊山町、吉井町が合併して誕生。総面積２０９・４３平方キロメートル、人口４万５２９１人（０９年３月１日現在）。桃、ブドウ、黒豆などの栽培が盛んなほか、複数のワイナリーも経営されている。山陽団地は７１年に県営住宅として建設され、現在約６０００人が居住している。