おとっちゃんはそう言うと、窓の外に目をやった。青い空には、雲が一つもなかった。
「おとっちゃんはひろみの味方なんだ……」
「どっちの味方でもねぇて。おとっちゃんは、二人が仲ようなってくれりゃあえんじゃ。この写真みてぇに、二人で笑うてくれたら、ええんじゃよ」
「……そんなの無理だよ。だって、アタシ、あんな目にあって、ひろみのこと、絶対に許せないし……。縁、切ったし」
アタシはおとっちゃんが手に持ったままの壊れた写真たてを見つめた。写真の二人はとびきりの笑顔だった。
「さやかちゃん、縁を切るのは簡単じゃ。じゃけど親友じゃろ。親友はそう簡単にはつくれるもんじゃあねぇ。許してあげる優しさを持つのも大切じゃよ」
(許す……? 許してあげる優しさ……?)
「おとっちゃんが、逆の立場だったら許せんの?」
アタシは普通に疑問に思ったことを尋ねた。
「もちろんじゃ。悪いのは馬鹿なことをしたやからじゃからな。親友のせいじゃねぇ。大切な親友を失うことのほうが、よっぽどつれぇて!」
アタシはどうしてもひろみを責めたかった。どうしてそこまで恨もうとするのかが、自分でもわからない。この事実を誰かのせいにしたかったのかもしれない。
「男も悪いけどさ、AVしたほうも悪いじゃん!」
「きっかけはどうあれ、親友は恨まんな。おとっちゃんが恨んじゃったら一番苦しむのは親友じゃよ。親友は自分を追い込んで、いたたまれんくなるじゃろ。親友を苦しめることは、おとっちゃんはイヤじゃ」
「友達が苦しむより、自分が苦しいほうがいいってこと? なんでそんな寛大になれんの?」
「もちろん、かけがえのない人だからじゃよ。おとっちゃんも迷惑かけることもあるからの! もちつもたれつじゃ」
(かけがえのない人……)
「ひろみちゃんがこの世からいねくなっても許さんかね?」
おとっちゃんの言葉に、アタシの心が揺らいだ。おとっちゃんの顔は、何か悲しいことでも思い出しているかのようだった。
<つづく>
ななみ :
2009年6月3日 at 1:22 AM
親友は宝だね☆
アイス :
2009年6月3日 at 7:31 AM
おとっちゃんの言う通り、悪いのはさぁちゃんを襲ったやつらだよ。
さぁちゃんももちろん苦しい。
でも、みひろちゃんも絶対苦しいはずだよ。
おとっちゃん、元気になってほしい。
2人も、元の仲にもどってほしい。