アタシは、ひろみに罵声を浴びせると電話を切った。それから、海が見える高台にある市立病院に向かった。
アタシの目の前のベッドに横たわっているのは、おとっちゃんだった。
「さやかちゃん、よう来てくれたのう。おとっちゃん、うれしいて……」
あの元気なおとっちゃんの面影はうすれ、布団から出ている腕は真っ白で骨と皮だけだった。去年の夏に浜茶屋『青いくじら』で会ったときのおとっちゃんとは、まるで別人だった。腕はこんがり焼けていて、筋肉もついていたのに……。
「おとっちゃん、気をつけてな。もうそんなに若くねんだからさ! 心配したじゃんか。身体、大丈夫なん?」
「あはは、そうだのう。心配かけて悪かったのぉ。おとっちゃんはじじぃじゃからのぉ。そろそろぽっくりいくんかのぉ。この暑さはこたえるわい」
「はっ? 何言ってんの。超~元気そうじゃん。おとっちゃんは不死身だから大丈夫!」
本当は心配で心配でたまらなかった。アタシがいる手前、おとっちゃんは元気に振る舞っているが、風邪の咳とはちがう嫌な咳をしながら話しているし、身体も力が入っていないように見えた。しかし、ここでアタシが暗くなってはよくないと思い、あえて冗談まじりに話した。
心地よい海風が窓から病室に舞い込んでくる。おとっちゃんの白髪が風になびいていた。おとっちゃんは今年で七十五歳だった。
「さやかちゃん、何かあったんじゃろ」
「えっ? ……あ、うん」
アタシはトートバッグの中からバラバラに壊れた写真たてを、おとっちゃんの目の前に差し出した。
「おとっちゃん、写真たて壊しちゃった。ごめんなさい」
ななみ :
2009年6月3日 at 1:22 AM
親友は宝だね☆
アイス :
2009年6月3日 at 7:31 AM
おとっちゃんの言う通り、悪いのはさぁちゃんを襲ったやつらだよ。
さぁちゃんももちろん苦しい。
でも、みひろちゃんも絶対苦しいはずだよ。
おとっちゃん、元気になってほしい。
2人も、元の仲にもどってほしい。