殺人など重大事件の公訴時効のあり方を考える森英介法相の勉強会が、1月から法務省内で始まっている。
現在の制度に異議を唱える犯罪被害者遺族の心情や科学捜査の進展を背景に、論点を洗い出すことが狙いだ。刑事法制のバランスなども議論の対象に、撤廃や延長の是非を議論している。
「時効ですべて終わってしまう状況に、一人の人間としていささか疑問を感じている」
森法相は1月23日の閣議後会見で私見を述べた。一方で「法律全体の整合性など一朝一夕にいく問題ではない。予断を持たず、虚心坦懐(たんかい)に理性的に検討を進めたい」と慎重に言葉を選んだ。
勉強会は、会見前日の22日に初会合を開いた。森法相はじめ刑事局幹部ら約10人が集う。早川忠孝政務官が座長のワーキンググループが中心となり、時効撤廃や延長のメリット、デメリットを挙げて論点整理を進める。
公訴時効の意義は、(1)証拠の散逸(2)処罰感情の希薄化(3)個人の地位安定とされる。DNA捜査の進展や遺族の声の高まりで意義が薄れつつあるとの指摘がある一方で、傷害致死や交通死亡事故など他の犯罪との均衡も法整備上は重要な観点だ。
最高刑が死刑の重大犯罪の時効は05年の刑事訴訟法改正で15年から25年に引き上げられたばかりで、省内には慎重論も多い。【石川淳一】
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自民、公明、民主の各党も動き始めている。民主党は1月22日の法務部門会議で、公明党は同16日の法務部会で、それぞれ法務省の担当者から、▽国内外の時効制度の概要▽同省勉強会の検討内容--などについて説明を受けた。自民党は法務省の勉強会の結論を待って議員の意見を集約する意向だ。【石丸整】=おわり
2009年2月14日