時効の長さはその罪の最大の懲役刑に匹敵する。殺人罪(懲役21年以上)は時効も21年になる。しかし、多重殺人や性犯罪を伴う殺人など、最高刑で終身刑が科せられる罪の場合には時効がない。
時効(prescrizione)の語源はラテン語で、制度としてはローマ帝国時代に、土地の権利争いを収めるために取り入れられた。罪を許し、罰を減らすという恩赦や減刑とは違い、犯罪追及、懲罰に当たる国の負担を減らすという考えから来ている。
国には被害者や遺族の訴えがなくても、犯罪者を追う権限がある。同時に、被害者が何と言おうと、それを放棄する権限もある。
時効はどんな時に成り立つのか。時と共に事件に対する社会の記憶が薄らぎ、その結果、それを解決し罪を罰するという国家の利益も薄まるためだ。実際、時が忘却を呼び、証言は不確かになり、捜査や裁判が難しくなる。もし、時効がなければ、膨大な時間と労力を使う捜査当局への圧力は延々と続く。
時効は、効率を上げるため、ある程度の事件に見切りをつけるという、あくまでも国が主体のものだ。
終身刑が科される罪の場合に時効がないのは、罪の重さから、先に挙げた「社会の記憶」がかなり長く続き、犯罪を解決するという国家の利益も長びくためだ。事件の複雑さ、立証の難しさから捜査に、より時間を要するという理由もある。
ただし、遺族の感情をおもんばかって時効を延ばすといった議論は起きていない。ローマ帝国では紀元前から、復讐(ふくしゅう)や報復という考え方を排除してきた。罰を下すのはあくまでも神であり、そこに遺族や犠牲者は立ち入るべきではないという考えから来ている。【聞き手・ローマ藤原章生、写真も】=つづく
2009年2月13日