殺人罪など重罪の時効は、犯罪発生時から10年、非行や軽犯罪は3年と比較的短く定めている。しかし、刑事訴訟法は同時に「時効停止」の規定を設けているのが特徴だ。犯行と同時に時効は始まるが、検察・警察が覚知し捜査に入った時点から時効の対象外となり、捜査終了後に再び時効が発効する。
また、捜査が手詰まりになりいったん中断すると、時効が発効するが、その後、新事実が出てきて捜査が再開されれば、時効は再度、事件発生時と同じゼロからスタートする。
これは捜査をより確実なものとするための制度で、19世紀に制定された刑事訴訟法以来ずっと続いている。現在も多くの捜査で適用されており、検察・警察は事情聴取で時効停止を長引かせるなどテクニックとして用い、また事件全体の流れを見ながら時効停止や再開を繰り返す。
時効を定めていることは、「容疑者へのダメージが強すぎないよう抑制する」という意味があり、被害者や遺族の容疑者への反感が薄れていく場合に有効だ。一方、いつまでも反感が消えないケースもあり、検察側は事件の状況を見ながら時効停止の措置を適宜運用する。適用はすべてケース・バイ・ケースとなっている。
例えば1975~79年にブルゴーニュ北部で15~26歳の女性7人が暴行、殺害された事件では、犯人不詳のまま84年に捜査が中断。そこから時効が発生していたが、93年に新たな事実が浮かんだとして捜査が再開され、00年に元バス運転手(74)が逮捕され、04年に終身刑判決が下った。事件発生から10年の時効はとうに過ぎていたが、時効発効は新事実が浮かんだ93年から新たに10年間となっていた。【聞き手・パリ福井聡】=つづく
2009年2月11日