忘れない 「時効」よ止まれ

文字サイズ変更
ブックマーク
Yahoo!ブックマークに登録
はてなブックマークに登録
Buzzurlブックマークに登録
livedoor Clipに登録
この記事を印刷

「時効」よ止まれ:殺人と時効:各国制度から/2 米国 元検事、ケネス・オドネルさん

ケネス・オドネル アメリカ ニューヨーク市立大刑事司法学部助手・元検事=小倉孝保撮影
ケネス・オドネル アメリカ ニューヨーク市立大刑事司法学部助手・元検事=小倉孝保撮影

  ◇ニューヨーク市立大刑事司法学部助手・元検事、ケネス・オドネルさん(33)

 すべての州法、連邦法とも、殺人に時効を規定していない。それは英国の影響を受けた建国以来の歴史だ。

 今議論されているのはレイプや誘拐などの重罪で時効を廃止すべきかどうかだ。政治家の多くは、犯罪に強い姿勢を示すべきだと考えるため、廃止を支持する傾向が強い。ニューヨーク州は06年、レイプの時効も廃止した。

 一方、弁護側からは廃止すべきでないという声もある。それは、事件から長時間経過して突然、「犯人はあなただ」とされても、関係者の記憶が薄れていたり、目撃者がすでに死亡していたりで反証が難しいためだ。

 しかし、捜査側には、時間が経過しても、最近の科学捜査の発達でかなり問題が解決できるようになったとの認識がある。90年代になってDNAを使った捜査技術は急速に進歩した。米国の警察は今、長期未解決事件(コールドケース)についてDNAを証拠として保存しておく特別な部署を設置している。70年代の事件で最近、DNAで犯人が特定できたこともあった。

 また、DNAが検出された場合、犯人を特定しないまま容疑者「ジョン・ドウ(名無しの権兵衛)」で起訴することも行われている。DNAの個人識別レベルは極めて高く、問題はないと思う。

 「時効」は、すべての関係者の利益になるような答えはない。結局、人権への配慮と社会正義の実現とのバランスをいかにとっていくかということだ。その意味で日本が時効についての勉強会を設置したのは賢明だ。時効を廃止した場合の長所と短所を検討して、時代や社会に合った法律に変えればよい。結論が出るまで、暫定的に「ジョン・ドウ」起訴を採用することも選択の一つだと思う。【聞き手・ニューヨーク小倉孝保、写真も】=つづく

2009年2月10日

忘れない 「時効」よ止まれ アーカイブ一覧

 

特集企画

おすすめ情報