答弁本文情報
平成十六年五月二十五日受領
答弁第九六号
内閣衆質一五九第九六号
平成十六年五月二十五日
内閣総理大臣 小泉純一郎
衆議院議長 河野洋平 殿
衆議院議員川内博史君外一名提出今国会提出の著作権法の一部を改正する法律案に於ける暫定措置廃止後の法律の運用に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。
衆議院議員川内博史君外一名提出今国会提出の著作権法の一部を改正する法律案に於ける暫定措置廃止後の法律の運用に関する質問に対する答弁書
一について
図書館法(昭和二十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する私立図書館又は図書館法第二十九条第一項に規定する図書館と同種の施設が、これらの施設の利用者から、図書館法第二十八条に規定する入館料その他図書館資料の利用に対する対価を徴収している場合において、当該対価が、書籍又は雑誌の貸与に対する対価という性格を有するものではなく、これらの施設の一般的な運営費や維持費に充てるための利用料であると認められる場合には、著作権法(昭和四十五年法律第四十八号。以下「法」という。)第三十八条第四項に規定する「料金」に該当しないものと解される。
二について
私立の学校法人が、その設置する学校に在籍する生徒等から徴収する授業料は、当該学校の管理運営等の支出全般に充てられるものとして徴収されることが通例であり、その一部が当該学校の附属図書館の運営費に充てられるとしても、そのことをもって直ちに当該授業料が書籍等の貸与に対する対価という性格を有するものではなく、法第三十八条第四項に規定する「料金」に該当しないものと解される。
法第三十八条第四項に規定する「営利」とは、業としてその貸与行為自体から直接的に利益を得る場合又はその貸与行為が間接的に何らかの形で貸与を行う者の利益に具体的に寄与するものと認められる場合をいうものと解される。したがって、構造改革特別区域法(平成十四年法律第百八十九号)第十二条に定める学校設置会社が設置する学校の附属図書館において、通常の教育活動として、当該学校に在籍する生徒等に書籍等の貸与を行う行為は、法第三十八条第四項に規定する「営利」を目的とするものに該当しないものと解される。
三について
二についてで述べたように、法第三十八条第四項に規定する「営利」とは、業としてその貸与行為自体から直接的に利益を得る場合又はその貸与行為が間接的に何らかの形で貸与を行う者の利益に具体的に寄与するものと認められる場合をいうものと解され、お尋ねの鉄道会社が、駅に文庫を設置して、乗客に書籍又は雑誌の貸与を行う行為は、一般的には、自己の利益を図るものではないと考えられ、法第三十八条第四項に規定する「営利」を目的とするものに該当しないものと解される。
また、お尋ねの地方自治体の教育委員会等が、公的活動として、市営交通機関の駅に文庫を設置して、乗客に書籍又は雑誌の貸与を行う行為は、法第三十八条第四項に規定する「営利」を目的とするものに該当しないものと解される。
四について
お尋ねのように、大手スーパーマーケットが、店内に文庫を設置して、顧客に書籍等の貸与を行う事例も見受けられる。そのような場合には、当該行為が、例えば、顧客の増加を通じてその売上げの拡大を図ることを目的として行われるものであるならば、法第三十八条第四項に規定する「営利」を目的とするものに該当するものと解される。
読書活動の素材となる書籍等を創作する著作者の権利について、適切な保護を図ることは、子どもの読書活動の推進に関する法律(平成十三年法律第百五十四号)の趣旨に反するものではない。今国会に提出している著作権法の一部を改正する法律案により、書籍等の貸与について、貸与権を及ぼすことは、著作者の権利の適切な保護を通じて、書物の創作活動の促進に資するものであると考えている。