定年後のアルコール依存症 増加 孤独感から深酒
| ミーティングに臨む患者ら。近年は高齢で発症するケースが多いという=東北会病院 |
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高齢になってからアルコール依存症を発症する患者が増えている。団塊の世代の大量退職が一因とみられ、退職後数年で発症するケースが多い。高齢の患者は回復が比較的早いが、医師らは「手遅れにならないうちに早めに治療を受けてほしい」と呼び掛けている。
宮城県内で唯一、アルコール依存症患者の病棟がある東北会病院(仙台市青葉区)。2008年度に受診した依存症患者は259人。24%にあたる62人が60歳以上の高齢者だった。
30年前は、60歳以上の患者はわずか5人。全患者に占める割合も8%にすぎなかった。
石川達院長は「最近は定年退職後に発症する患者が目立つ。在職中は仕事一筋でまじめなタイプが多い」と指摘する。
在職中にはそれほど飲まなかった人でも、退職後2、3年で発症するケースが多いという。
同病院に通う青葉区の男性(61)は1月、依存症の診断を受けた。主に営業担当として約40年間メーカーに勤め、昨年9月に退職。以来、自宅で夜に飲酒する毎日になった。
酒量が徐々に増え、就寝時間が遅くなった。酔って断片的に記憶を失うこともしばしばだった。在職中にはなかったことだという。昨年末からは就寝時に亡父や別居する母の幻覚を見るようになった。異変に気付いた家族に勧められ受診した。
男性は「仕事を辞めて身の置き場がなくなった感じがした。他との付き合いが薄れ、寂しさや孤独感を酒で紛らわそうとしたのかもしれない」と振り返る。診断を受けて以来、飲酒は控えているという。
アルコール依存症患者らの回復を支援しているNPO法人の宮城県断酒会にも、このところ、高齢患者の家族からの相談が多く寄せられるようになっている。
理事長の大平孝夫さん(64)は「高齢の患者は家族らが相談に来る時点で状態が悪化しているケースが多い」と話す。大平さんによると、依存症患者の家族には恥の意識があるため、相談が遅れることが多いという。
予防策は、酒量を自分でコントロールする習慣を身に付けることが挙げられる。その上で、大平さんは「在職中からきちんと家族とコミュニケーションを取り、退職後の生き方を描くことも大事」と呼び掛けている。
[メ モ] 宮城県内で、アルコール依存症の患者や家族らを対象とする主な相談窓口は次の通り。 宮城県こころの健康相談=0229(23)0302▽はあとぽーと仙台(仙台市精神保健福祉総合センター)=022(265)2191▽宮城県断酒会=022(214)1870▽AA東北セントラルオフィス=022(276)5210
2009年06月03日水曜日
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