アウトドアエッセイ

西表に住もう! by山下智菜美


第40回 犬・ネコを飼う
―ペットの長生きを阻む、西表の怖い“毒餌”ルール!?―

 野生動物の宝庫といわれる西表島ですが、ペットもたくさん飼われています。

 ちょっと変わったところでは、カモ。アイガモ農法でお米を作っているお宅では、たんぼに放すには大きくなりすぎたアイガモを庭で養っているところも。そのうち鍋にするつもりが、
「だんだん情が移って、もう食べられないよ〜」
 とぼやいているのを聞いたことがあります。

 知り合いの犬は、昔、食用にされていた赤犬と呼ばれる種類に似ているらしく、散歩をさせているとよく声をかけられるようです。
「うまそうだねぇ。つぶすときは教えてね」
 厳しい自然環境の中、かつては食べ物にさえ事欠いていた島では、動物を飼うのは食料にするため、という発想が根強くあるのかもしれません。

 現在、西表でポピュラーなペットといえば、やはり犬とネコ。わが家では大家のおじいがネコを飼っています。絶滅危惧種、イリオモテヤマネコのいるこの島では、ヤマネコ保護のため「交通事故防止キャンペーン」があったり、ネコエイズをうつされないよう「飼いネコの登録と去勢」を呼びかける放送が集落内に入ります。野ネコの駆除も始まりました。

アイガモくんたち。写真を撮ろうと近寄ると逃げる。


今は亡きシロ。小心者ながらかわいいヤツであった


近所の犬、ゴリはみかけは汚いがやさしいワンコ。放し飼いなのに毒餌にやられないのが不思議。




わが家のネコたち(一部)。なぜかみんな器量よし。
しかし大家のおじいは、
「人間ばかりがえらいわけじゃない。ヤマネコばかりがえらいわけじゃない」 という哲学の持ち主で、去勢をさせません。あるがまま。しかしベタベタにかわいがるわけでもない。おじいも自由に暮らすかわりにネコも気ままに生活しています。見ていると対等な感じがするのです。ネコはときに10匹ぐらいに増えますが、もらわれたり死んだりして、だいたいいつも4〜5匹に保たれています。

 島のペットは、特に放し飼いの場合、長生きできないことが多いようです。“毒餌”と呼ばれる殺鼠剤を食べて死ぬことがあるからです。本来は畑の作物を荒らすネズミ退治のためのものですが、犬やネコにまで効いてしまうらしい。大家さんのネコが数匹、犬も1匹、それで死にました。また、古い集落では犬、ネコを飼うことを嫌う傾向があります。鳴き声がうるさい、特に放し飼いだとそこら中でフンをし集落を汚す、というイメージのようです。そのため、放し飼いの犬・ネコは毒餌をやって殺してもいい、という暗黙のルールがあるとか。怖いですねぇ。
 ほかに命を縮めるモトとなるのは、交通事故。大家さんの2匹目の犬は、私の車の後を追って県道に飛び出し、前から来た車にはねられて死にました。すべてがあっという間の出来事でした。まだ1歳半ぐらいだったのに。
 しかしペットもやられてばかりいるわけではないのです。特にネコ。大家さんのネコはネズミを捕まえたり、ヘビをくわえていることがあります。友人宅のネコは、天然記念物のリュウキュウコノハズクを取ってきたことも。キャットフードで暮らしながら、野生の本能は失われていないみたいです。
(41回に続く)


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