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社説

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米GM破綻―クルマ文明変革の機会に

 20世紀に花開いた自動車文明のチャンピオンとして長く世界に君臨した米ゼネラル・モーターズ(GM)が経営破綻(はたん)に追い込まれた。

 大口債権者や全米自動車労組(UAW)などからあらかじめ同意を取り付けた「事前調整型破綻」という点は、クライスラーと同じだ。しかし、ざっと4倍の事業規模であるだけに、米国経済への影響が心配だ。

 リストラでGMの規模は現状の6割程度に圧縮されるという。米政府は、部品メーカーや関連産業への連鎖的な打撃を緩和しなければならない。薄明かりの見える米経済に対して生産減少や雇用削減が及ぼす悪影響を最小限にとどめる努力も求められる。

 世界の自動車産業地図も激変する。トヨタ自動車を筆頭に、次の集団にフォルクスワーゲン、フォードや新生GM、日産・ルノーなどがひしめく構図になる。世界市場が縮む中で、米政府のてこ入れが保護主義を招くような事態は防がなければならない。

 1908年創立のGMは、31年にフォードを抜いて販売台数で世界一の座に躍り出た。名経営者アルフレッド・スローンに率いられ、多様な車種でモデルチェンジを繰り返して需要を喚起し、販売金融を駆使するなど、今日見られる自動車産業の多くの手法はGMが作り上げたものだ。

 だが、メーカーとしての絶頂期は半世紀前で、その後は長い下り坂の歴史だった。石油高騰や環境問題を受けた市場の激変に適応しきれず、日本や欧州のメーカーに押される一方となる。何より、燃費のいい小型車を作ることが不得手だった。それでも、世界的な自動車市場の膨張や金融面で進んだ米国経済の肥大化という追い風を頼みに、07年まで何とか世界一の座を維持してきたというのが実態だ。

 新生GMの成否は、この長い後ろ向きの歴史を逆転できるかどうかにかかる。しかも、米政府とUAWが大半の株式を握る異様な「国有会社」としての再出発だ。大株主であるオバマ政権は、電気自動車など環境対応車の開発に巨額の資金を援助して、GMをグリーンな新産業の担い手として蘇生させたい考えだ。しかし、政府主導で事業の縮小均衡はできても、収益性をよみがえらせる事業再生までは困難だ。

 クライスラーが伊フィアットという新たなスポンサーを得たのとは対照的に、GMの変革を誰がリードするのか、なお霧の中にある。

 燃費のいい小型車やハイブリッド車、電気自動車などの新製品をいかに開発し、効率的につくるか。その鍵を握るのは、経営陣と働く人々の意識変革だ。日本や欧州の車づくりから謙虚に学び、新しいグリーンな歴史を作るのだという気概を持てるか。突破口はそこにある。

国会大幅延長―解散からもう逃げるな

 今国会の会期を7月28日まで大幅に延長する方針を政府与党が決めた。これを受け、焦点の総選挙の投票日は8月以降に先送りされるとの観測が与党幹部から相次いでいる。

 総選挙を遅らせれば遅らせるほど、麻生政権がうってきた経済対策の効果が出てくるに違いない。民主党の鳩山新体制への「ご祝儀相場」も色あせよう。そんな思惑からなのだろう。

 だが、あまりにも党利党略が先走ってはいないか。

 先週、09年度補正予算が成立し、麻生首相が昨年秋から力を入れてきた緊急経済対策は、一段落がついた。

 補正予算の執行に必要な関連法案はまだ成立していないが、鳩山民主党は対決一辺倒の「小沢時代」とは一線を画し、いたずらに審議の引き延ばしはしない方針を掲げている。

 実際、与野党の歩み寄りで消費者庁関連法が成立したように、補正予算関連法案や公文書管理法案をめぐっても与野党の修正協議が進んでいる。

 海賊対処法案などでは与野党の賛否が分かれ、慎重な審議が必要だが、それでも与野党は今月中に決着をはかろうとしている。

 そうなれば、もはや解散・総選挙を引き延ばす理由はなくなるはずだ。麻生首相はその時点で、ただちに国民に信を問うべきである。

 総選挙が遅れると、心配なことがある。政権の交代があろうとなかろうと、新政権はすぐにも来年度予算案の編成に取り掛からねばならないのに、その作業に支障が出かねないことだ。

 8月といえば例年、予算の概算要求に向けて各省庁の政策づくりが本格化する。選挙結果しだいでその作業をやり直すことになればあまりにも無駄だし、出遅れは避けられない。できるだけ早く選挙を終え、作業を軌道に乗せる必要がある。

 この8カ月、経済と雇用の危機への対応が何よりも優先すると言ってきた首相である。無用の混乱は避けるのが筋ではないか。

 情けないのは、与党内でも評判がさんざんな公務員制度の見直し法案を、今国会で成立させたいとの声が政府与党自身から飛び出したことだ。解散先延ばしの口実にしようとの思惑ならとんでもない話だ。

 北朝鮮の核をめぐる事態は深刻だが、いずれにしても9月には衆院議員の任期は切れることになる。

 7月12日の東京都議選からできるだけ投票日を離してほしい。公明党からはそんな先送り論が出ているが、首都とはいえ一地方選挙が国政選挙の日程を左右するなら本末転倒である。

 衆院議員の任期はあと100日。解散日程をめぐる駆け引きはもういい加減にして、有権者に問う政権公約をこそ、各党は競い合うべきだ。

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