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社説:延長国会 さあマニフェストを急げ

 通常国会は7月28日まで55日間延長されることが2日決まった。これにより与党内では次期総選挙の投開票は8月末以降となるとの見方が出ている。だが、これ以上先送りする理由はほとんど見当たらない。懸案が決着し次第、早期に衆院を解散すべきだと改めて指摘したい。

 麻生太郎首相は解散日程のフリーハンドは確保したつもりかもしれない。今年度補正予算関連法案などを成立させ、実績を強調して選挙に臨む場合は会期末ぎりぎりに解散し、8月30日か9月6日の投票とする。一方、法案に野党が抵抗し、審議を引き延ばせば、「野党は経済対策より政局優先」と批判して、それ以前の解散に踏み切るというわけだ。

 また、河村建夫官房長官が2日否定したものの、延長国会閉会後、臨時国会を開いて解散し、選挙を衆院議員の任期満了(9月10日)以降にする奇策も不可能ではない。

 しかし、民主党はいたずらに審議を遅らせないとの考えを示し、早期解散を求めている。要するに野党の事情というより、なお首相の決断がつかないだけではないのか。

 昨秋の就任以来、麻生首相は何度も機会がありながら解散を決断できなかった。迷っている間に任期満了は迫り、実際には自ら解散に打って出て国民の信を問うというタイミングはなくなりつつある。もはや実態としては解散権は失われ、任期満了選挙と同じといってもいいのだ。

 いずれにせよ衆院選は事実上始まったということだ。各党はマニフェスト作りを一層急ぐべきだ。

 民主党が鳩山新体制になってマニフェスト重視の姿勢に転じているのは歓迎したい。政策は官主導から政治主導への転換や税金の無駄遣いを排することなどが柱となりそうで、批判が強かった「財源はどうするか」の問題も、より詳細に書き込むという。ただ、まだキャッチフレーズ優先だ。具体的で説得力のある公約作りができるかどうかがカギだ。

 対する自民党はマニフェスト作りでも焦りが見える。民主党が打ち出した国会議員の世襲制限に追随する動きが出たが、党内に異論が出て早くも見送られる見通しだ。今後、消費税率引き上げ問題に関して公約でどう書くのか、党内で議論になるのは必至で、ここでも麻生首相の指導力と本気度が問われるだろう。

 経済対策や社会保障政策など国内問題だけでなく、これからの日米関係をどうするかなど外交・安保政策も各党は主張を明確にしてほしい。そして目先の課題だけでなく、10年後、20年後の日本の姿を描いてもらいたい。次の衆院選は文字通りの政権選択選挙だ。有権者に判断材料を示すのは早いほどいい。

毎日新聞 2009年6月3日 東京朝刊

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