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映画は細部に宿る 髙山文彦
映画マニアとしてアニメ業界に名高い髙山文彦監督に「映画の細部」を聞こうという本連載。「細部」が話題だけに、話題もあっちこっちの寄り道ほうだい。今回も果たしてどこまで行くのやら。
最終回 髙山監督が選ぶDVD化してほしい10作とは
(前のページからのつづき)
―第6回「 サム・ライミと『トムとジェリー』と『ポパイ』」でも触れましたけど、カートゥーン・ファンの髙山さんとは気になる、と。
髙山 そうそう。じゃあ今度は、さっきも話題になった第2回でも触れたけど、記号的な命名の映画を1本挙げようか。ロバート・アルドリッチの『北国の帝王』('73)。これはリー・マービン扮する主人公の名前がA-No.1というの。
―へぇ〜。
髙山 舞台は大不況時代のアメリカ。ホーボーと呼ばれる浮浪者が、汽車にただ乗りをして旅をしているんだけれど、シャックという名の車掌(アーネスト・ボーグナイン)がいて、次々とホーボーを自分の列車からたたき出している。ついに、A-No.1が、「お前の列車にただ乗りしてみせる」とシャックに挑戦状を叩きつけ、その戦いの顛末を描いている。要するに車掌とルンペンの、ただ乗りの攻防戦を描くとてつもなく単純な内容で(笑)、これが映画になるのかと思うんだけど、恐ろしいことに痛快娯楽映画になってしまう。アルドリッチはときどき、女があまり出ない映画を撮るんだけれど、これもその1本。女が画面に大きく写るのって、A-No.1と若者が列車の屋根から降りるときに、女が腋を剃っているのを窓越しに見る場面と、別の女が河で洗礼を受ける場面の二つきりじゃないかと思う。両方合わせても一分未満じゃないかしら(笑)。あとはひたすら男同士の戦いが繰り広げられてる。
―ストイックといえばストイックですよね(笑)。
髙山 じゃあ次は、そのリー・マービン繋がりでジョン・ブアマン監督の『殺しの分け前 ポイント・ブランク』('67)を。ジョン・ブアマンはこれと『脱出』('72)、それに『戦場の小さな天使たち』('87)がいいんだよ。、
―ブアマンの『脱出』は第7回「『光と水のダフネ』と死体、それからちょっと市川崑」でも、その死体描写が話題になってましたね。あと『戦場の小さな天使たち』は髙山監督の『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』に影響大の作品ですよね。
髙山 うん、でも『戦場の小さな天使たち』と『ポイント・ブランク』はDVDになってないんだよね……ブアマン最良の2本なんだけど。『ポイント・ブランク』のストーリーは典型的なアメリカの犯罪もの。リー・マービン演じる主人公のギャングが仲間に裏切られて、収監されたアルカトラズ刑務所を脱走して、自分の分け前を取り返しに行くという。おもしろいのは時制の使い方。冒頭は、「犯罪に誘われる場面」「裏切られて撃たれる場面」「アルカトラズ刑務所に収監される場面」がそれぞれ平行モンタージュで描かれるの。最初は「え?」って思うけど、見ているうちに「なるほど」と。この後も、「アルトカラズからの脱獄シーン」から「脱獄後にアルトカラズの観光船に乗ってる場面」へとつないだりしていて、時間の飛ばし方が凄い。
―なんか、混乱しそうな構成ですね。
髙山 時制が飛ぶのは、撮り方が明快なんですぐに慣れてしまう。変わっているのはロケーション……どこかシュールなんだよね。ディスコのステージで、プロジェクターがスクリーンにスライド映像を映していて、その前で女が踊っている。スクリーンの裏側で、映し出された映像を背景に、リー・マービンが無表情に黙々と相手を殴ったりする。過剰なハードボイルド性がシュールレアリズムに転化するというか、鈴木清順の『野獣の青春』('63)に雰囲気が似てるというか。ありふれた物語が、語り口と風景を工夫するだけで、ここまで面白くなるかというサンプルだと思う。
―リー・マービンが2作続きましたね。
髙山 次は『デリンジャー』('73)というジョン・ミリアスの初監督作を。ウォーレン・オーツとベン・ジョンソン というペキンパー映画の常連脇役をメインに据えているのがおもしろい。大不況時代に実在したギャングとFBIの抗争を扱っている。同じギャングものでも『俺たちに明日はない』('67、アーサー・ペン監督)よりも数段いいと思う。作りが集団劇に近いので、ミリアスのウェットなところが抑え目になっているところもいいんだと思う。タイトルバックがなかなかセンスがよくて。不況時代のモノクロ写真に、当時のヒット曲の「We're in the Money」を流しているというもの。余談だけど、この「We're in the Money」を検索したら、YouTubeで動画を見つけたんだけど、歌っているのがバーナデット・ピーターズで、アルドリッチの『ロンゲスト・ヤード』('74)で、グラマーな秘書役をやってる人なんだよね。
―へぇ。いろいろとつながるものですね。じゃあ、次の映画を。
髙山 それでは今度は『昭和残侠伝 死んで貰います』('70、マキノ雅弘監督)で。これもシリーズものなので、プロットはどれも似たようなもなんだけれど、語り口が上手いんですよ。高倉健は料亭の息子だったんだけれど、グレて今は渡世人。賭場で痛めつけられた高倉健が、柳の下にいると芸者見習いの藤純子が通りがかって「ヤクザのおにいちゃん」と声をかけるんですよ。こういうイノセントな呼び方でキャラクターがぐっと立体的になる。『ルパン三世カリオストロの城』('79)の「泥棒さん?」と同じ系統の手口なんだよね。
―娯楽映画の王道的手法ってことですね。
髙山 しかも、傷ついたヒーローが樹の根本にいて、少女時代のヒロインと出会うという(笑)。どうということない話なんだけど、役者の仕草が何とも色っぽくて、するする最後まで見せられる。こういうのを見ていると、話なんてどうでもいいやという気になる(笑)。ちょっと余談を言うと、昭和残侠伝シリーズでは大抵、池部良が昔使っていたドスの封印を切る場面があるんだけど、これは『ストレンヂア 無皇刃譚』(安藤真裕監督)にちょっと使わせてもらった(笑)。
―ああ、そうなんですか。えーと、ここでちょうど9本ですね。じゃあラストの10本目は……。
髙山 じゃあ、10本目は『ピストン野郎』('63)で。これは後に『まぼろしの市街戦』('67)を監督するフィリップ・ド・ブロカの作品。実は俺、これまでこの作品を見ている人にほとんど会ったことがなくって、例外は、大塚康生さんとか市川崑のインタビュー本を書いた森遊机さんだけなんだよね。
―へぇ、そんなにマイナーな作品なんですか。
髙山 ロードショー公開されずに、最初から二本立て興行だったのがマイナー化した一因らしい。主人公は、大金持ちの叔父と城で暮らしている若者なんだけど、何度も同じ夢を見るの。叔父が死んで、落ちぶれた主人公が鉄工所で働いている、という夢。叔父さんはその話を聞くと「そんな馬鹿なことあるわけないじゃないか」と笑っている。落ちぶれる夢とお城の暮らしが何度も繰り返して描かれるんで、おじさんが死んじゃっても、また夢なんだろうと思っていると、今度は現実で(笑)。無一文で社会に投げ出された主人公が、生きるためにパリで悪戦苦闘して、絶世の美女(カトリーヌ・ドヌーヴ)に恋して、彼女を追いかけるのがお話の軸になる。最初のうちはすれ違い続きで、全部で3回ほどすれ違う。最初は望遠鏡で姿を見て、2回目は道路の向こう側の電話ボックスで見かけ、3回目は、別々の鉄道列車ですれ違う。いずれも、距離を無効化する小道具を通じて彼女を見かけるんだけれど、最後に彼女と出会うのが製鉄工場の中で、溶けた鉄の火花が飛び散る中でプロポーズして、最後には結婚してしまう。
―不思議な話ですね。
髙山 うん、ロマンチックコメディというか、ある種のファンタジーなんだけれど、不思議な雰囲気があってね。特に撮影が素晴らしかった記憶がある。色彩が実に生き生きしていて鮮やかで。『まぼろしの市街戦』も人気があるけど、これも同じくらい素晴らしい。『うる星やつら・ビューティフルドリーマー』を見たとき、この作品思い出した……夢と現実の境界が曖昧になる感じが近かったせいなんだけど。
―ふむ。……というわけで、10本出そろいましたけど、'60年代から'70年代の作品ばかりですね。
髙山 やっぱり、自意識が形成される時期に見た映画の存在が大きいってことなんだと思う。あと今回の10本、文章だけである程度おもしろさが伝わるような、物語性の強い作品を中心に選んだんだよね。
―そうだったんですね。そういうストーリーの綾のおもしろさは、髙山作品にもよく見られるように思いますが。
髙山 うーん、それは自分の志向というより、求められるところに合わせている方が大きい。脚本を書いている時の方が演出やるときよりは、物語志向が強くなってると思うしね。監督作だと『オーガス02』('93)の時は、わりとドラマをやろうと思っていたんだけど、逆に『WXIII PATLABOR THE MOVIE3』('01)の時はちょっとテンパっていたせいもあって、「ドラマはもうミニマムでいいや!」って物語性から遠ざかろうとしていた。……でも、この連載の収録中に何度か言っているけど、要するにお話っていうのはだいたいパターンでできているんだよ……要素にまで分解してしまうと、大方のお話はほとんど似たようなパターンに落ち着いてしまう。重要なのはストーリーよりもストーリーテリング、どう語るかという語り口の方で。オーソドックスにお話を語ろうとすると、映画の演出とか脚本ってのは、ある意味、古典落語家に近くならざるを得ない。おなじみの話を、膨らませたり、はしょったり、アレンジしたりしながら、見せていくわけで。
―だからこそ、映画は細部が大事、ということなんですね。
髙山 うん、そうなんだよ。
構成・文:藤津亮太
髙山文彦監督が選ぶDVD化してほしい10作
- 『ハロルドとモード 少年は虹を渡る』
- 『バード・シット BIRD★SHIT』
- 『関の弥太ッぺ』
- 『真田風雲録』
- 『ヤングゼネレーション』
- 『北国の帝王』
- 『殺しの分け前 ポイント・ブランク』
- 『デリンジャー』
- 『昭和残侠伝 死んで貰います』
- 『ピストン野郎』
今回で『映画は細部に宿る』は最終回です。1年間、ご愛読ありがとうございました。
髙山文彦 プロフィール
アニメ制作スタジオのトップクラフト、アートランドを経てフリーに。1989年『機動戦士ガンダム0080 ポケットの中の戦争』で監督デビュー。現在公開中の『ストレンヂア 無皇刃譚』では脚本を務めている。代表作は『WXIII 機動警察パトレイバー』(総監督)、『ガンパレード・マーチ 〜新たなる行軍歌〜』(監修・シリーズ構成・脚本)など多数。
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